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イプシ・マーケティング研究所
<コラム&レポート> -ビジネスレポート-
映像配信サービス

 ブロードバンドの普及とともに、ネット上に映像コンテンツが増えた。PC端末で映画を観ることが珍しくなくなり、ユーザー参加型の動画投稿サイトも次々に登場している。

 一方、「通信と放送の融合」に向かう流れの中で、STB(セットトップボックス)を受信端末とする映像配信サービスにも通信事業者やケーブルテレビ事業者の参入が相次ぎ、リビングルームのテレビでも、ブロードバンド回線経由のVOD(ビデオオンデマンド)サービスなどを利用できるようになった。

 これからのコンシューマ向けサービスを考えるとき、「映像」は間違いなくキーワードのひとつである。今回お届けするレポート・シリーズが、「次」へのヒントとなるかもしれない。

第4回 オープンインタフェース株式会社 「DOING.TV
2007.10.4
<オープンインタフェース株式会社> http://www.oii.co.jp/
<DOING.TV> http://www.doing.tv/



■オープンインタフェースグループの総合力を結実したDOING.TV


 オープンインタフェース株式会社(以下、オープンインタフェース社)が提供する映像配信サイト「DOING.TV」は、マルチアングルストリーム技術を応用した臨場感あふれるパソコン向け動画配信サービスである。

 「DOING.TV」では、マルチアングルによるモータースポーツチャンネル、沖縄情報チャンネル、FMラジオ番組とのコラボレーションチャンネルなど、他にはない番組の提供を行っている。

 オープンインタフェース社のビジネスモデルは、これまでの映像配信サイトとは一味違う。というのもDOING.TVは、一般ユーザー向けの映像配信サイトとしての役割だけでなく、オープンインタフェースグループの総合力を結集して見せる“ショールーム”としての側面を持つからである。

 DOING.TVの狙いはどこにあるのだろうか。


「DOING.TV画面」
DOING.TV画面
Copyright (c) OPEN INTERFACE, Inc.



■互換性認証機関からの脱却


 まずは、オープンインタフェース社という企業の成り立ちから紐といてゆこう。

 1992年当時、パソコンの世界ではNECのPC-98シェアがダントツであった。オープンインタフェース社の前身である「AX協議会」はこの年、IBM社が提唱するアーキテクチャの日本語拡張規格(AX)を啓蒙普及し、この規格で設計された機器の互換性を検証するために設立された。

 AX協議会では、検証の過程でうまく動作しない場合、ドライバソフトウェアの開発をしたり、動作確認を行うソフトウェアを開発していたため、パソコン周辺のソフトウェアに関する技術を持っていた。また、同様に無線通信規格のノウハウや動画圧縮規格などの画像系ソフトウェアについてもノウハウを積んでいた。

 2001年、AX協議会はその役割を終えたが、AX協議会が行っていたパソコン、及びプリンタ、デジカメなどのパソコン周辺機器の互換性検証事業を引き継いで誕生したのがオープンインタフェース社である。

 これらのソフトウェアや無線規格の認証に関する技術やノウハウに加え、市場調査やサーバ事業を行う子会社を束ねてオープンインタフェースグループとして始めた新事業が「DOING.TV」である。


■動画配信サイトDOING.TVの概要


 DOING.TVは、2005年9月に試験放送を、2005年12月に本放送を開始した。

 モータースポーツ&カーライフの専門チャンネルである「D-スポーツ」、音楽、ラジオ番組との完全コラボレーションチャンネル「Evolution D」、沖縄の『知る』、『見る』、『遊ぶ』を公開する「沖縄チャンネル」、バラエティ、アイドルやタレント、声優の専門チャンネル「D-スポット」、チャンネルの枠を越えた映像を提供する「Doing:REQUEST」と主に5つのチャンネルが用意されている。また、沖縄の特産品を中心に販売する通販サイト「DOING SHOP」ももつ。

 都道府県や誕生日、メールアドレスなどを入力する会員登録をすれば、コンテンツはすべて無料で閲覧することができる。

 モータースポーツやFMラジオと連動した音楽番組が特徴で、会員は30代〜40代男性が多い。

 モータースポーツ専門誌 「AUTO SPORT」とタイアップするなど、少しずつではあるが、複数のメディアを横断する「クロスメディア」の開拓に力を入れている。

 今後はファッション番組など、女性向けのチャンネルも立ち上げて利用者層を広げていく方針だ。

 また、子会社として、サーバ管理会社であるオープンインタフェース沖縄社を抱えており、人気の観光スポットの情報をいち早くとらえることができるため、沖縄チャンネルを提供している。


■マルチアングル映像で臨場感あふれるモータースポーツチャンネル


 DOING.TVで最も特徴的なのは、モータースポーツチャンネル「D-スポーツ」で提供されているマルチアングル映像である。

 マルチアングルとは、一つの被写体を複数の視点から撮影し、それらを同時に配信するもの。それによって複数の視点からの映像を同時に視聴できる。運転席の視点、客席からのレース映像、レース順位をほぼリアルタイムで同期をとって提供している。見る側がストレスを感じない程度に同期をとることで、ひとつの映像を4つの視点で見ることが可能である。

 このほかに、マシンとレーサーの基本情報、レーシングコースの基本情報も表示され、さながらレーシングゲームの画面のように、臨場感を楽しむことができる。


「D-スポーツ」のマルチアングル画面
「D-スポーツ」のマルチアングル画面
Copyright (c) OPEN INTERFACE, Inc.



■“ショールーム”としてのDOING.TV


  このDOING.TVは、一般ユーザーにコンテンツを提供する映像配信サイトというだけでなく、オープンインタフェース社の総合力によって、インターネット放送の仕組みを提供できることを潜在顧客に見せるための“ショールーム”でもある。

 オープンインタフェース社では、顧客の要望に応じて4種類のサービス提供パターンを用意している。

 一つ目は、DOING.TVと同じように、インターネットを使った動画配信サービスを提供するためのシステム構築から提供するパターンである。

 二つ目は、物販サービスや映像配信サービスなどDOING.TVがもつサービスを部分的に提供するためにシステム構築を行うというもの。

 三つ目は、オープンインタフェース社が所有するデータセンターや映像配信サーバを使い、放送配信サービスをアプリケーションとして提供するASPサービス。

 そして四つ目は、DOING.TVの一部にコマーシャルや動画コンテンツを掲載する、つまり広告配信である。

 これまで、パソコンやその周辺機器の互換性検証事業を行っていた際には、取引相手がメーカーなどに限られていたが、DOING.TVを核として事業を広げることによって、新規顧客を開拓することができつつある。


■BtoBからBtoBtoCへ


 BtoB事業からBtoBtoC事業へ進出を果たした事例のひとつは、病院向け、アミューズメント施設向け、ホテル向けのシンクライアントソリューションである。

 シンクライアントとは、ユーザーが使うクライアント端末に必要最小限の処理をさせ、ほとんどの処理をサーバー側に集中させるシステムアーキテクチャーのことである。

 オープンインタフェースは、このシンクライアント端末を製造・販売する子会社を持っており、病院やホテル、学校などへの導入を視野に入れたシステム開発を行っている。

 既に病院向けには「ベッドサイドサービス」として、福島県にある竹田綜合病院にて利用されている。特に産婦人科ではサービスによる差別化ニーズが高く、妊婦向け体操の動画配信など、動画配信サービスが果たす役割は大きいという。

 このサービスでは、グループ力を生かし、端末だけでなく、端末、放送システム、コンテンツなどを“一気通貫”で提供できることが強みである。


■DOING.TVのこれから


 「今のところ、DOING.TVの広告収入だけではビジネスにはなりません。ただし、ある程度会員数を持っている組織や、テキストデータではなく動画データを使ってサービスしたいというところがあれば、一緒にできることの可能性はいくらでもある」と担当者は意気込む。

 講談社から出版された浅田次郎氏著「中原の虹」のプロモーションをDOING.TV上で行ったこともある。浅田氏のインタビューを流したのだが、講談社のホームページからリンクをたどってきた人がかなり多く、反響も大きかったという。

 このような、インターネットを活用したプロモーションや、病院向けのベッドサイドサービスに代表されるハードからコンテンツまでを提供する事業など、DOING.TVを見渡すと、オープンインタフェースの総合力はまだまだ発揮される分野がありそうだ。

 今後は、いわゆる“How toもの”にマルチアングルを展開していきたいとのこと。たとえば、モータースポーツのように見て楽しむものだけでなく、ゴルフやテニスのように自分も楽しめるもので、複数の角度からの動きをとらえて見るニーズがあるスポーツなどに適用できるということだ。

 ただし、オープンインタフェースはもともと「技術者集団」なので、営業は新規開拓が中心となる。「今まではパソコンメーカーが中心でしたが、いまは、いろんなところに営業に行っています。昨日も沖縄へ日帰りで営業してきました」と担当者は日に焼けた顔をほころばせ、「大変だけれどもやりがいがあります」と結んだ。



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