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| 第2回 旅行のクチコミサイト フォートラベル |
| 2006.12.28 |
<フォートラベル> http://4travel.jp/
だがここ数年はそんな悩みを抱えることも激減した。インターネット上に散在していた「クチコミ」を一箇所に集める「クチコミサイト」の登場が大きい。数ある「クチコミ」を収集し編集することで立派な「情報媒体」に仕立て上げた「クチコミサイト」は、集合知をもってその底辺を支えられるものであり、Web2.0の代表格と位置づけてよいだろう。 今では利用者とサービス提供者とをつなぐ架け橋の役割を担う「クチコミサイト」も珍しくない。 今回の取材先はその代表例である『旅行のクチコミサイト フォートラベル』。代表者の津田氏にお話をうかがった。 ■ナナロク世代の起業家、津田全泰(つだぜんたい)氏 『旅行のクチコミサイト フォートラベル』(以下、『フォートラベル』)は、読んで字のごとく旅行関連の「クチコミ」を集めたサイトである。サイトの詳細は後で述べるとして、まずはその成り立ちについて触れておきたい。 『フォートラベル』の創業者である津田全泰氏は1976年生まれ。いわゆる「ナナロク世代(=1976年前後に生まれたネット起業家の総称)」のど真ん中である。そんな彼が大学に入学したのは1995年、Windows95との出会いがあったことは容易に想像がつく。 そしてこの時期、インターネット先進国であるアメリカでは、大学院生がネットビジネスで起業し巨額の富を築き上げ、これにより既存の社会経済・働き方というものも大きく変わり始めていた。 インターネット界の大変革とそれに伴う社会の転換期に学生という立場で存在したことは、「ナナロク世代」の大きな特徴である。 ■スタンフォード大への語学留学を機に「ネットの世界での起業」を志す このような社会の変化と相俟って、大学入学後にインターネットに強い興味を持った津田氏は、大学2年生時の語学留学先に米・スタンフォード大学を選択する。この留学、冠にある「語学」は実はオマケであったらしい。 留学の真の目的はシリコンバレーの空気に触れることにあったのだ。そしてこの留学を経て津田氏は、「ネット」の世界で「起業する」という選択肢が現実味を帯びたものとしてあることを肌で感じ、自らの進む道を漠然とではあるがその方向に定めたのだった。 ちなみに断っておくと、津田氏は大学入学以前からコンピュータやプログラムに慣れ親しんできたいわゆる「コンピュータオタク」ではない。コンピュータそのものよりも“インターネットを通じてできること”に興味を持ち、「ネットと心中してもいい」と言い切る、自称「ネットオタク」である。 「ネットの世界で起業する」ということと、“インターネットを通じてできること”への大変な興味は、現在でも彼の中に一貫したものとして存在する。 ■即起業はせず、インターネットビジネスの先駆け「楽天」へ入社 さて、そんな津田氏も大学3年生ともなれば例に漏れず就職活動という局面を迎える。「いつかはネットの世界で起業する」という志が揺らぐことはなかったが、社会を知らずに即起業することには抵抗を感じ、就職活動を実施した。 そこで大手システム系コンサルティング会社や大手システム・インテグレータから内定はもらったものの、そんな折、田中良和氏(現、GREE代表)と出会い、語らうなかで、「自分はPCを作りたいわけでもプログラムを組みたいわけでもない。“インターネットを通じてできること”に興味があるんだ。」ということを再確認したという。 その直後、新聞紙面にて「楽天」の存在を知り、津田氏は入社を決めた。「楽天」が手がけるショッピングモールでは地方や小規模の店舗が出店し、ビジネスチャンスを与えられている。つまりインターネットの力を利用することによって様々な既成のひずみをフラットにしているのだ。 これこそが“インターネットを通じてできること”、“ネットビジネス”であり、「ネットの世界で起業する」という自らの将来を見据えて入社を決断した。 こうして8人目の社員として「楽天」に入社した津田氏は、5年あまりの勤務において、営業からシステム関連の業務、のちに『フォートラベル』設立のきっかけとなる「楽天トラベル」の立ち上げ・運営に従事することとなる。 ■「楽天」退社、いよいよ『フォートラベル』設立へ やや話が遠回りしたが、その後津田氏は、2003年に「楽天」を退社し、いよいよ起業へと動き出す。そんな折、またしても好機での出会いがあった。もう一人の『フォートラベル』創業者、請川貴之氏との出会いである。 請川氏は旅行関連の出版社の社員であり、過去には添乗等をこなす旅行業界のプロであった。二人は飲み会の席で「ユーザーとしての自分はどんなサービスがほしいか、旅行者に対してどんな情報をどんなかたちで提供したいか」ということを語り合い、意見が一致したという。 そこには新たな事業を立ち上げる事業企画者としての「自分ならもっとこうやる。こうしたい」という考えだけでなく、ユーザーにとってよいサービスを作りたいという強い思いがあったのだろう。 そして、こういった思いをベースにして、巨大な資金や組織を有せずとも最小限のコストとパワーで起業できるという環境が、インターネットの世界には整いつつあった。オープンソースがその一つでありこれこそWeb2.0の産物といえるものだろう。 こうした背景もあって種種雑多なサイトやサービスが誕生したが、その中で『フォートラベル』は、サービスとしての完成度が高く、ビジネスとしても成功している群を抜いた存在である。その成功の秘訣はどこにあるのだろうか。 ■オールラウンダーな二人、徹底したSEO対策と先を見越したサイトデザイン コストを極力かけずにたった二人でスタートした『フォートラベル』。それを可能とした背景には先に触れた要因以外にもこんなものがあった。 実はこの二人、ともにオールラウンダーなのだ。ともに営業の経験があり、そしてプログラミングができる。これは大変な強みである。サイトの構築はオープンソースを使用しプログラミングは自分たちで手がける。さらに、ネットと心中できると言う「ネットオタク」津田氏と、旅行業界出身の「旅行マニア」請川氏がそれぞれの専門知識を生かすのだ。 そして、今や旅行情報サイトでは閲覧者数第1位を獲得するまでに成長している『フォートラベル』だが(Netratings調べ)、開設時には当然ながら無名の「クチコミサイト」であった。その立ち上げをどうやって行ったかが気になるところであるが、津田氏の答えはいたって単純明快だった。「検索エンジン対策を徹底的にやった」のだそうだ。 SEOに関する書籍を何冊も読み、そこに書かれてあることを徹底的にすべてやる。この取り組みが見事に実を結んだのであり、彼らの先を見越しての戦略だったといえよう。 また、サイトの構造についても同じようなことがあてはまる。『フォートラベル』と他の旅行情報サイトとの違いは、拡張性を見越した設計となっているか否かにあるそうだ。 例えば他の旅行情報サイトでは、ユーザーの声はユーザーの声として、旅行商品の情報はそれとして、分断された場所に存在することが多い。つまり、「バリ」についてのクチコミを見たいときには、クチコミのページから「バリ」にまで辿りつき、また「バリ」の旅行商品情報を見たいと思えば旅行商品を紹介するページからもう一度「バリ」にまで辿りつく必要があるのだ。 一方『フォートラベル』では、「バリ」なら「バリ」で、クチコミ情報も旅行商品情報も同じ場所から辿っていくことができるのだ。「バリ」のクチコミを読んでいたときに、ついでに「バリ」の旅行商品をちょっと見ることができる。 エリアやテーマごとの情報が縦横にクロス、さらに表裏に貼り合わされているサイト構造であり、ユーザー側が発信する情報も事業者側が発信する情報も同じ立ち位置から四方八方に辿っていくことができるのだ。そしてこれこそが彼らが求めた「旅行メディア」の在り方なのである。
■旅行に関わる全プロセスをサポートする そんな『フォートラベル』の最大の特徴は、この一つのメディアで旅行に関わる全プロセスをサポートできる点にある。 先に触れたサイト構造の話とやや重複するが、ユーザーはこれまで、サイト内の別ページ、あるいは全く別の場所に存在するユーザー発信のクチコミ情報と事業者発信の旅行商品情報、予約・購入手続きのサイトを、目的とフェーズに応じて使い分けていたのである。だが『フォートラベル』ではそういった問題は発生しない。 旅行の計画段階で渡航経験者の旅行記(個人の旅日記のようなもの)を閲覧することから、旅行商品情報の入手・予約、準備段階でのクチコミ閲覧や渡航経験者への質問、さらに旅行後の旅行記の作成など、旅行に関わる全プロセスにおいて、『フォートラベル』はユーザーをサポートすることができるのである。 ■サイトが荒れない理由:旅行者一人ひとりに与えられる「ブログスペース」 より具体的に『フォートラベル』を説明しよう。 現在『フォートラベル』には、旅行者が投稿する「旅行記」105,000件、「旅行写真」1,500,000枚、ホテルや店舗・観光スポットなどテーマごとの「クチコミ」42,000件、「教えて!トラベラー」(Q&A)21,000件のクチコミ情報が蓄積されている。またサプライヤーは現在約800社であり、そこから寄せられる旅行商品の情報も当然揃っている。 ユーザーは、エリアやテーマごとにこれらのクチコミ情報を見ることができ、クチコミ情報と同じ場所から旅行商品情報などへも移動できることは先に説明した。また、会員登録した旅行者(トラベラー会員)には各人にブログスペースが与えられ、そこに情報を発信できる仕組みとなっている。 この旅行者一人ひとりに提供するブログスペースは、他のクチコミサイトにない特徴であるが、次のような効果をもたらすそうだ。 旅行者が書き込む旅行記やクチコミ、Q&A(教えてトラベラー!)といった情報は全てこの個人に与えられたブログスペースに集約される。よって情報を書き込む側の意識としては、共有スペースに「投稿」するというよりも、自分のブログを「更新」するという感覚に近い。ゆえにこの仕掛けが、いわゆる「荒らし」や無責任な投稿の発生を未然に防ぐことに一役買っているのだという。 確かに自分のブログ上に無意味な暴言を吐く人はあまりいないだろう。他のクチコミサイトや掲示板は公共物のような存在であるがために「荒らし」や無責任な投稿が発生しやすいという津田氏の説明にも納得がいく。 ■サプライヤーからの情報、『フォートラベル』のビジネスモデル そして気になるビジネスモデルであるが、『フォートラベル』の収益構造は、クリック広告と成約報酬が5割、バナーなど月単位での広告収入が5割だそうだ。 前者については極端に言えば営業努力をしなくても始められることから、サイトの立ち上げ当初はまずこちらから手がけ、サイト立ち上げ後1年半が経って後者の広告収入が得られるようになったという。先にも触れたが、現在、サプライヤーの数は約800社にのぼり、この数はそのままユーザーが『フォートラベル』内で入手できる旅行社、旅行商品の数につながっている。 なおこれとは別に、旅行社が自社の情報を発信できる場として「カタログスタンド」というものを無料で提供している。一部有料のものもあるがそれでも利用料は1,000円から、と破格である。 「カタログスタンド」とは、『フォートラベル』内に自社の紹介ページを持つことができるものであり、小規模な旅行社や特定のエリアやテーマに特化した専門旅行社の利用が多いという。まさにこれらの旅行社にとっては『フォートラベル』の集客力を借りることによってビジネスチャンスが拡がる貴重な場であり、一方ユーザーにとっては、入手できる旅行情報の幅が広がることになる。これはまさに“インターネットを通じてできること”の好例だろう。 ■これからのフォートラベル 最後に、『フォートラベル』の今後についてであるが、まずはサプライヤーである旅行社から提供される情報を適切にサポートし、情報発信の促進を図りたいと言う。 現在のサイトは、クチコミについてはユーザー発信の情報が全面に出ているが、旅行社が把握している情報、例えばテロや事故・災害などの情報から当地の耳より情報など、言わば事業者発信のクチコミ情報も取り込んでいき、旅行業界横断型の「コミュニケーションプラットフォーム」として完成された存在になることを目指しているそうだ。 さらには、旅行先をどこにするかが決まっていない、さらには旅行に行くことさえ決まっていないユーザーに対するナビゲーションも今後は手がけたいとのこと。つまりは紙媒体のように、見ているうちに行きたくなると思わせるような仕掛けもしていきたいそうだ。 また課題として、現状膨れ上がったクチコミ情報をいかに的を絞ったかたちでユーザーに提供することができるかという点について、今後模索する必要があると感じているという。 ■これからの津田氏 津田氏個人の今後についても触れておきたい。 彼は経営者ではなくてあくまでも起業家でありたいと言う。そして「ネットと心中してもいい」とも口にする。つまり彼は学生時代に掲げた「ネットの世界で起業する」ということに現在でもこだわり続け、そして“インターネットを通じてできること”に今でも強い興味を持ち続けているのだ。旅行以外にも何か面白いことが見つかれば、現在の地位に安住する気はないと言い切る。 『フォートラベル』のサイトとしての成長はもちろんだが、津田氏個人の今後にも是非期待したい。 |