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イプシ・マーケティング研究所
<コラム&レポート> -ビジネスレポート-
映像配信サービス

 ブロードバンドの普及とともに、ネット上に映像コンテンツが増えた。PC端末で映画を観ることが珍しくなくなり、ユーザー参加型の動画投稿サイトも次々に登場している。

 一方、「通信と放送の融合」に向かう流れの中で、STB(セットトップボックス)を受信端末とする映像配信サービスにも通信事業者やケーブルテレビ事業者の参入が相次ぎ、リビングルームのテレビでも、ブロードバンド回線経由のVOD(ビデオオンデマンド)サービスなどを利用できるようになった。

 これからのコンシューマ向けサービスを考えるとき、「映像」は間違いなくキーワードのひとつである。今回お届けするレポート・シリーズが、「次」へのヒントとなるかもしれない。

第2回 株式会社 The ZABIC 「Ohkey!」
2006.12.6
<株式会社 The ZABIC> http://www.ohkey.jp/


■日本初のインターネットテレビ局から進化した“Ohkey!(オーキー)”


 株式会社The ZABIC(ザ・ザビック、以下ZABIC)は、渡辺プロダクショングループでテレビ番組制作を行う株式会社ザ・ワークスのインターネット事業部を母体とし、2000年に独立したデジタルコンテンツ制作会社である。ザ・ワークス時代に日本初のインターネットテレビ局として“itv24.com”を発足し、インターネットによる自主制作番組配信に取り組んでいる。

 2006年6月、「itv24.com」はリニューアルされ、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)機能を含むポータルサービス「Ohkey!(オーキー)」として生まれ変わった。

 その狙いと、インターネット放送局としての今後の展望について、代表取締役 加藤敏男氏、取締役兼デジタルコンテンツ事業部プロデューサー 稲垣陽介氏、制作部エグゼクティブプロデューサー 亀田活始氏にお話を伺った。

左から 亀田氏、加藤氏、稲垣氏
左から 亀田氏、加藤氏、稲垣氏



■ダイヤルアップ回線時代にインターネット放送をスタート


 「Ohkey!」の番組制作を主導する亀田氏は、ザ・ワークス時代には、テレビ番組の企画や制作を次々にこなす根っからのテレビマンだった。

 その亀田氏がインターネットと出会って、大きな可能性を感じたと言う。「テレビは、いろいろな制約があり、どんどん面白さがなくなっています。インターネットとテレビとの決定的な違いは双方向性。これを生かして、視聴者と一緒にテレビよりもっと面白い番組作りができるはずと信じて、itv24.comを立ち上げました」。

 「長年ひっそりとやってきました」と亀田氏は笑うが、「itv24.com」の放送開始は1999年だ。当時のインターネット接続環境はまだフレッツADSLサービスの開始以前でブロードバンド化が進んでおらず、「動画配信とはいえ、受信側での映像はガタガタでした」と亀田氏。この状況で「itv24.com」を見てくれる視聴者は、新しもの好きのイノベーター層であった。

 開局当初は、視聴者の利用料金を無料にし、スポンサーの広告掲載料でまかなう広告ビジネスモデルを目指し、テレビで人気のタレントを起用した番組作りをしていたが、「テレビと同じことをしても視聴者は伸びず、ビジネスになりませんでした」と稲垣氏は言う。


■映像配信サーバー事業への進出


 ZABICでは、インターネット放送事業以外に、テレビ番組の企画・制作、デジタルコンテンツの企画・制作やホームページ制作受託事業などを行っている。

  代表取締役の加藤氏は、「うちは資本金も従業員数も少ない小企業です。資本調達して突っ走るベンチャー企業でもない。そんな会社が映像配信サービス事業を手がけるのは至難の業です」と言う。

 「それで考えたんですよ。テレビをやっていた人間だからこそ番組作りには自信がある。しかし、インターネット放送でどのプレイヤーが儲かるのかといえば、インフラなんですね。実際、ビジネスとしてなかなか軌道に乗らない要因の一つは、インフラ整備やメンテナンスに多大なコストがかかることです」。

 そこでZABICは、株式会社ライブドアと提携し、オンデマンド映像配信を可能にするホスティングサービス“Net Vision Flash Streaming”を開発した。ZABICは、コンテンツをAdobe Flash形式で配信しており、これにはコンテンツサイズが軽く視聴者はWebブラウザで簡単に視聴できるという利点がある。そのノウハウを事業化することにより、映像配信サーバー事業という新たな核ができた。

 このサービスについて加藤氏は次のように続けた。「視聴者がいつでも好きな時に視聴することができるオンデマンド放送は、視聴者の接続数に合わせてサーバーを増やす必要があるため、どうしてもサーバー使用料がかさむ。だからといって接続数を絞ると、視聴者に迷惑をかける。実際にそんなことがいろいろなサービスで起こっています。でも、我々は視聴者にエラー画面を見せるようなことはしたくないんです」。

 “Net Vision Flash Streaming”の開発で自前の映像配信サーバーを手に入れたことにより、ZABICにとってインフラというボトルネックが解消された。


■“ヴィジュアル系”にテーマをフォーカスし、コミュニティ機能を付加


 先駆的なインターネットユーザーを視聴者に持つ「itv24.com」は、これまでもアニメやアイドルなど、ニッチだが熱心なファンを持つ分野を模索しながら番組を提供してきた。

 そして行き着いたのが、“ヴィジュアル系バンド”と呼ばれる、見る者の目を惹く派手な外見が特徴のロックバンドのファンたちであった。ヴィジュアル系バンドファンは、10代から20代の女性がほとんどでファン意識が高い。

 以前の「itv24.com」の視聴者は、アニメやアイドルが主要コンテンツであったこともあり、20代〜30代の男性が圧倒的に多かったが、ヴィジュアル系バンドをテーマに掲げることで、中心的視聴者は10代〜20代の女性へと大きくシフトした。

 そこで、ファン同士のコミュニケーションを活性化するためSNSを導入し、動画&コミュニティサイト「Ohkey!」に発展させた。インターネット放送局「itv24.com」は「Ohkey!」に統合され、サービスメニューのひとつになっている。


「Ohkey!」のトップページ
Ohkey!のトップページ
出所URL:http://www.ohkey.jp/
Copyright(c) 1999 itv24 - 2006 Ohkey.jp


■動画&コミュニティサイト「Ohkey!」


 「Ohkey!」の狙いについて、加藤氏は次のように語る。「サービスのあり方を見直していくなかで、サービス内容の拡張を考えた。好きなアーティストの動画視聴から、コミュニティによるファン同士の交流やアーティストとの交流へ、そしてアーティストのグッズへの関心から、より幅広い商品購入へと、いわば芋づる式に視聴者を引き込んでいく仕組みを作ろうと考えたのです」。

 稲垣氏がヘッドとなって作り上げられた「Ohkey!」。現在のサービスメニューは以下のような構成である。

itv24
  オリジナル番組のライブ配信が中心。現在11番組あり、視聴無料番組と有料番組がある
オンデマンド
  オリジナル番組や映画などの無料の動画コンテンツをいつでも視聴可能。現在の番組数は13
ゲーム
  有料で、有効期間内に有効時間分プレイできる。タイトル数は130超
コミュニティ
  マイルーム(日記などを管理するエリア)とコミュニティ(他の視聴者と交流するエリア)で構成。コミュニティは、itv24の人気番組や音楽、趣味などをテーマに現在30余り開設されている
ショッピング
  現在はDVDのみの販売
その他
  若い女性向けのトレンド情報を集めたコラムなど、女性誌のようなコンテンツも掲載されている

 「Ohkey!」の動画視聴やコミュニティ参加には無料の会員登録が必要である。有料ライブ番組の視聴には、サイト上でWebMoneyまたはクレジットカードで購入手続きを行う。1番組単体視聴が600円、有料の3番組を全て視聴できるパッケージ視聴は1,000円で、いずれも1か月間有効。各番組とも1週間に1度の配信なので、1番組につき4回視聴できることになる。

 「リニューアル当初は、視聴者側も戸惑いがあったようですが、徐々にマイルーム・コミュニティの利用も増えてきています」と稲垣氏。

 今後は、SNSにアーティストが参加し、交流をより活発化させる取り組みや、アーティストがプロデュースするグッズの販売など、ポータルサービスとして視聴者の満足度を高めていく予定である。
 

■双方向性を生かしたネットならではの番組企画


 「itv24」で最も人気がある番組は「東海林のり子の仕事もロックもハードが最高!」である。芸能リポーターだけでなく、インディーズのバンドファンとしても知られる“ロッキンママ”こと東海林のり子さんをキャスターに起用し、ヴィジュアル系バンドとのトークを展開している。

「東海林のり子の仕事もロックもハードが最高!」
左から 亀田氏、加藤氏、稲垣氏
Copyright(c) 1999 itv24 - 2006 Ohkey.jp


 しかし「itv24」が本領を発揮するのは、メールやチャットを利用した、インターネットライブ放送だからこそという企画である。視聴者を惹きつけるのも、出演するアーティストとリアルタイムにチャットでやりとりできるといった参加感だ。

 例えば「想い出歩記(おもいであるき)」は、ファンからファンへ1冊のノートに書き込みをしてまわしていくという企画で、ノートはときには手渡しで、ときには郵送で、北海道から沖縄まで渡っていったという。番組内では、参加したファンたちがメールで送ってくるノートの写真で、それぞれのファンが書いたコメントが紹介された。

 今も「ミジンコミュージックアワー」という番組の中で続いている「わらしべ長者」という企画がある。アーティストの私物を始まりとして、番組時間中にファンも参加して物々交換をしていくというもの。「ツアーグッズのうちわが最後はクルマのBMWになったこともあるんですよ」と亀田氏は笑う。


■番組制作会社がネット映像配信を手がける意味


 テレビ番組の制作では、テレビ局が自ら番組制作したり、一部を番組制作会社に発注して制作する番組が多いが、番組制作全体を制作会社が受託し実施することも結構多い。また、本来、法的に著作権を持っているのは原作者である。

 それにも関わらず、テレビ番組放映ビジネスの契約関係としては、流通を握るテレビ局が優位にあるため、契約によって、最初からテレビ局が著作権を保有したり、テレビ番組をBS放送やCS放送、DVDなどに展開する二次利用の窓口権をテレビ局が保有することが多い。そのため、制作会社は自身が番組制作のすべてを手がけても、番組を流通させることはできない。

 “通信と放送の融合”が進まない要因として、著作権や契約に関する慣習の問題が大きいと加藤氏は言う。そして番組制作会社の立場として、ネット動画配信に取り組む意味を次のように説明した。

 「番組制作会社が著作権の保有や二次利用の窓口権を主張するためには、放送までも手がける必要がある。その点、インターネットはその格好な手段。だから力を入れて取り組みたい。我々としては、インターネット放送ならではの面白さを提供したい。こちらで先にヒットを出して、あとからテレビで番組になるくらいにしたいですね。」

「コンテンツ制作会社の立場で通信と放送の融合に貢献したい」と語る加藤氏
「コンテンツ制作会社の立場で通信と放送の融合に貢献したい」と語る加藤氏


 インターネット放送に着手して7年目。ここまで長くサービスを続けてきた原動力は、ネットならではの双方向コミュニケーションを利用して、視聴者と一緒になって面白い番組を作っていきたいという制作者としての情熱だ。

 今年はネット上のサービスを拡張し、動画&コミュニティサイトとして再スタートした。それによって、“ヴィジュアル系”というひとつのジャンル内で視聴者へのサービスを深めることができた。次は、ジャンルを拡げる横展開も可能だろう。

 来年にはネット上で新しいことを始める予定とのこと。次にZABICが何をやってくれるのか、とても楽しみだ。


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