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イプシ・マーケティング研究所
<コラム&レポート> -ビジネスレポート-
家庭向けセキュリティサービス

 一般家庭への侵入犯罪増加を背景に、家庭向けセキュリティサービスへのニーズが高まっており、今後の市場拡大が見込まれている。

 家庭向けセキュリティサービスは、現在セコム株式会社がシェア8割を占め、警備会社系のほぼ独壇場となっている。しかしネットワークを用いたセキュリティシステムはインターネットと親和性があり、ネット関連企業にとって参入障壁は比較的低い。ブロードバンドや携帯電話の普及によるメール送信・画像送信の簡便化、ネットワークカメラの高機能・低価格化で、異常を検知したら警備員が駆けつけるのではなく、携帯電話にメール送信・画像送信をするだけという、新たなセキュリティサービスも立ち上がりつつある。

 新規参入企業は、既存サービスとどのような差別化を図ろうとしているのか、家庭向けセキュリティビジネスの先進事例をレポートする。

第5回 イルガラージュ株式会社  「ライブキッズ」
2005.11.25
<イルガラージュ株式会社> http://ilgarage.com/


■ IPカメラを利用した保育施設の遠隔観察システム「ライブキッズ」


あんじきかずみ氏
安食歌純氏

 「IPカメラ」は、カメラ自体がIP(Internet Protocol)を持ち、通信ネットワークに直接つながってカメラに映し出される映像をインターネット経由で配信する。したがって、遠隔や多拠点のパソコン・携帯電話からカメラ映像を簡単に見ることができるため、防犯からペットの様子の確認まで、利用シーンが広がりつつある。

 中でも保育園や幼稚園にIPカメラを導入し、母親が自宅や職場などから子どもの様子を見ることができるサービスが人気のようだ。

 そこで今回は、このIPカメラを使った「保育施設向けライブカメラ『ライブキッズ』」について、開発・販売を手がけるイルガラージュ株式会社(以下、イルガラージュ)の代表取締役:安食歌純(あんじきかずみ)氏にお話をうかがった。


■サービス立ち上げのきっかけは家族のひと言


 イルガラージュは、ウェブ開発やホームページ運営、オフィス用品の販売を手がける、2000年10月創業の若い会社である。社員数7名(役員含む)という規模であり、そのフットワークは何と言っても軽い。

 この「ライブキッズ」の立ち上げに関しても、テレビ番組で海外の先行事例を知った安食氏の奥様の「保育園に預けた子どもの様子を自宅のパソコンで見られるらしい。こんなのやってみたらどう?」というひと言がきっかけだったそうだ。

 それからわずか3か月でサービスを作り上げた。ビジネスターゲットである保育施設について、ニーズの有無やセキュリティ機器の導入実態など一切の調査は行わず、一気にサービス開発から販売開始にまで至ったという。

 当初は周囲からの「機器メーカーなどがどこでも簡単にはじめられるサービスではないか?」といった厳しい指摘もあったというが、昨今の治安の悪化や共働きの夫婦の増加から、子どもの安全に対する保護者の不安を少しでも軽減させるサービスには必ずニーズがある、と確信していたそうだ。


■ 子どもの安全への意識が一気に高まった時期にサービスイン


 こうして「ライブキッズ」は2001年にスタートした。ちょうどこの2000年前後といえば、関西圏の小学校で「校内児童殺傷」というあまりにも痛ましい事件が続けて起こった。

 「開かれた学校」という理念を問い直すに十分すぎる影響を与え、学校をはじめ教育施設における防犯意識が一気に高まった時期だった。特に2001年6月の大阪府池田市の事件をきっかけに、通園・通学時など屋外だけでなく、施設の内部についても保護者が不安を抱くようになったのである。

 
■ 「ライブキッズ」の機能


 さて、この「ライブキッズ」だが、IPカメラを使用することで、施設の出入り口や室内の様子を遠隔から観察できるシステムである。既存の通信ネットワーク環境に簡単に設置可能で、インターネットを通じて映像を配信する。

 もちろんプライバシーに配慮して、ID・パスワードの発行により保護者のみにアクセスを制限することもでき、観察可能時間を設定することもできる。パッケージにはサーバーも含まれており、このサーバーを使用して施設のホームページ運用も可能だ。


「ライブキッズ」パッケージ
ライブキッズのパッケージ

Copyright(c) IL GARAGE Co., Ltd.


 保護者は家庭やオフィスにいながら、手持ちのパソコン・携帯電話から施設のホームページにアクセスし、ライブキッズ映像を見ることができる。保育施設にいる子どもの様子をリアルタイムに観察することができ、我が子の姿を追ってカメラの角度を操作することもできるのだ。


■ 「ライブキッズ」導入事例:大丸キッズハウス 自由が丘


 ではここで、「ライブキッズ」の実際の導入事例を紹介したい。

 首都圏の人気居住エリアの定番ともいえる「自由が丘」。ここに2005年9月2日にオープンした「大丸キッズハウス」も、この「ライブキッズ」を導入した施設の一つだ。まず、子どもを預ける保護者の方にお話をうかがった。
 

●保護者の方のお話 「職場から子どもの様子を確認することで大きな安心が得られます」

 今回お話をうかがったお子さんのご両親は、ともに神奈川県鎌倉市内の大学に勤務しており、両親に代わって祖母が送り迎えをすることも多いという(取材当日もおばあ様が迎えに来られていた)。

 おばあ様によると、2歳になって初めて我が子を保育施設に預けることが決まった際、母親は自身の勤務時間中に子どもの様子について何も情報を得られないことがかなりのストレスになるのではないかと不安を抱いていたそうだ。

 そんな折に「ライブキッズ」を導入したこの園の開設を知り、入園を決めたという。勤務時間の合間や昼食時に職場のパソコンから園内の映像を見ているそうで、我が子がきちんと食事や睡眠を取っているか、泣いていないか、保育士に迷惑をかけていないかなど、カメラを通して確認できるだけでも、大きな安心が得られるという。



 続いて施設の運営者である、株式会社大丸クレセール 保育・幼児教室事業担当:井上純子氏にお話をうかがった。

●施設運営者の方のお話 「導入理由は新設園の付加価値を高めるため」

 自由が丘駅周辺にはすでに保育施設が複数あり、「大丸キッズハウス」の新設に際してはアピール材料のひとつとして「ライブキッズ」の導入を決めたそうだ。

 少子化に伴って保育施設間の競争は厳しくなっており、保護者は複数の施設について様々な条件を比較した上で入園を検討する。大切な子どもを預ける保育施設に、保護者が高いクオリティを求めることは当然のことであり、とりわけ安全に関する設備・サービスに関心が高いことは言うまでもない。そういった保護者の要求にいかに具体的に応えるかが施設の運営者側にとっても鍵となり、そこで「ライブキッズ」に注目したというわけだ。

 見学にくる保護者にも「ライブキッズ」への関心が高い方人が多く、ニーズも予想以上に高いという。とりわけ、近年の保護者は園内のカメラの存在にいち早く気づき、遠隔からの観察の可否について説明前に尋ねられるケースも少なくないという。

 施設の運営者としては、子どもの安全について保護者からの信頼を得ることは何よりも大事であり、実際にカメラ映像を観察している保護者が安心を得ている点や、見学者の反応等から、「ライブキッズ」の導入は成功と考えているようだ。


 
井上純子氏 大丸キッズハウス入口 大丸キッズハウス室内
井上純子氏 大丸キッズハウス入口 大丸キッズハウス室内 


「ライブキッズ」 パソコン画面

ライブキッズのパソコン画面

Copyright(c) IL GARAGE Co., Ltd.


■ 映像によるコミュニケーションが「ライブキッズ」の目的


 IPカメラの機能そのものとしては、防犯・セキュリティ目的とコミュニケーション目的どちらの用途でも利用可能であるわけだが、「ライブキッズ」の場合は保護者等への映像公開を目的とした導入がほとんどであり、従来の防犯カメラのシステムでは不可能であった、施設と遠隔にいる保護者などとの映像によるコミュニケーションを可能にしている。

 とりわけ保育施設については、映像公開による情報の提供というコミュニケーションによって保護者の不安を軽減させることが、「ライブキッズ」の一番の目的なのだ。

 一方で、見方を変えればカメラによって撮影されその映像を外部から観察されることについて、プライバシーや肖像権の問題を取り沙汰する声もあがってきそうである。しかし、施設の従業員からも保護者の側からも、現時点ではそういった声はほとんど聞かれないそうだ。

 もっとも、導入した施設では設置当初しばらくは、保育士などが多少意識することはあるというが、1週間もすればカメラの存在をさほど意識しなくなってくるとのことである。


■ 安全を軸にビジネス拡大


 「ライブキッズ」はレンタルではなく機器の売り切り形式が基本だが、保守契約を結ぶケースが多く、イルガラージュとしては保育施設のホームページの運営や、園児・職員の入退室管理、保護者への連絡システム等をトータルにサービス・サポートすることを目指しているという。ICタグを用いた「スーパーライブキッズ」という子どもの居場所管理システムをすでにサービス展開し始めているという。


■ 今後も子どもをはじめ社会的弱者の安全・サポートにこだわっていく


 「ライブキッズ」について、飲食店やSOHO経営者からの問い合わせもあるというが、多目的・他用途での展開は現在考えていないという。安全・安心のためのシステムを売る以上、展開を広げることをよしとしないそうだ。

 なお、現在「ライブキッズ」は一般の保育施設以外に、大阪府豊中市にある「福祉作業所 クレヨン」という、知的障害者が作業等の活動を行う福祉施設にも導入されている。

 この「福祉作業所 クレヨン」は、1999年に知的障害者無認可作業所として開所し、2005年3月に社会福祉法人化された。障害の重度・軽度を問わず、「共に生きる・地域で生きる」をスローガンに、みなでバザーや自主製品製作、沖縄物産品販売などに取り組み、心の安定と自立・自活へ向け、毎日励んでいるという。ここでは、障害をもつ人々が作業を行う際、遠隔の医師に「ライブキッズ」の映像を見てもらい、指示を仰いだりしているそうだ。

 このように、子どもの安全や障害者の自立など、社会的弱者の安全・サポートにこだわってサービスを開発・展開するというイルガラージュの動きに、今後も是非注目していきたい。


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