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| 第1回 東京ガス株式会社 「ホームセキュリティ」 |
| 2005.6.16 |
| <東京ガス株式会社> http://www.tokyo-gas.co.jp/ ■ 老舗巨大企業が家庭向けセキュリティビジネスに参入
関東の一都六県と、山梨・長野県を含む地域一円に都市ガスを供給しており、顧客数は企業、家庭を併せて約945万件に及んでいる。ライフラインを提供する東京ガスの知名度・信頼度・ネットワークは、創業以来120年の間に築き上げたものだ。 その老舗巨大企業が、2004年4月から家庭向けセキュリティビジネスに参入し、新たなビジネス拡大を狙っている。東京ガスのホームサービス企画部、新規事業グループ主幹の横山睦人氏に、サービス開発の狙いや今後の戦略についてうかがった。 ■ 既存の通信インフラと販売網は、家庭向けセキュリティビジネス参入の好条件 東京ガスでは、もともと15年ほど前から、ガスを24時間監視する「マイツーホー」サービスを提供しており、家庭との通信インフラが整備されていた。 「マイツーホー」とは、電話回線を介して、ガスメーターの遠隔操作や異常を感知したときに東京ガスに通報するというもので、ガスメーター周りの安全・安心に特化したサービスだ。この「マイツーホー」は、すでに53万件に上る契約数を獲得しているが、最近は、加入者数の増加に伸び悩みも見られた。 そこで、2000年ごろから複数の新サービスの検討を進めていたが、その中の一つとして家庭向けのセキュリティサービスが第一候補に浮上した。 ガスは、"火"イコール"危険"というイメージがあるため、東京ガスでは「マイツーホー」をはじめ、ガスメーターやテーブルコンロなどガス機器・器具の安全機能の向上、不完全燃焼の防止などを進め、これまでも「安全」を売りにしてきている。したがって「安全」を売るセキュリティサービスは、"東京ガスが提供するサービスとしてふさわしい"、"東京ガスのビジネスとして適切なもの"という経営判断のもと、サービス開発が始まった。 さらに新事業の立ち上げに不可欠なのが販売戦略であるが、東京ガスの場合は、サービスを提供する全域に、販売ネットワーク「エネスタ」が存在する。「エネスタ」は、東京ガスのサービス窓口となって、家庭用顧客を対象に、ガスの開栓・閉栓から、機器の販売・修理・工事やガス機器周りのリフォームまでを手がける協力企業だ。 一から販売網を整備しなくても、既に家庭向け営業ネットワークが確立されており、競合の他サービスより優位に立っているという好条件にあった。 ■サービスインのタイミング、市場環境の見極めのためにマーケティング調査を実施 サービス開発に先立って、2001年にはマーケティング調査を実施している。どのようなセキュリティシステムが望まれているか、どんな企業にサービスを提供してもらいたいか等、きちんと顧客ニーズを把握し、分析するためである。 その結果、東京ガスは、セコム株式会社や綜合警備保障株式会社に次いで、サービスを提供してもらいたい企業の上位にランクされたのだ。「暮らしに密着した身近な企業、よく知っている企業ということで、安全を託するにふさわしい信頼を得たのではないか」と横山氏は分析する。 サービスシステムの開発は、「マイツーホー」においてすでに24時間監視のためのシステムを保有していたため「マイツーホー」をベースに構築された。ガスメーターの異常の遠隔監視、閉栓・開栓といったメーターの遠隔操作を行うガスの安全・安心を行う「マイツーホー」を実施してきた事業環境を考えると、「防災」プラス「防犯」という東京ガスのホームセキュリティサービスの提供は当然であったともいえよう。 セキュリティサービスに欠かせない「駆けつけ」(出動サービス)を、東京ガス社内で組織化し運営するというアイディアもあったが、「警備業法」にある「25分以内に出動できる待機所がある」という規定の遵守が困難という判断から、「防犯」サービスは警備会社に委託という形をとることになった。 当初から、サービス開始のタイミングは早ければ早いほどよい、という認識はあった。というのも、ホームセキュリティはセコム株式会社の独占という市場環境であったが、ニーズの高まりを受けて、いずれ電力会社や大手通信会社などが参入するのは必至という読みがあったからだ。 それでも、機器開発などの環境整備に時間を要したため、結果的にサービス開始は2004年4月となった。2004年の4月末にリリース・試行販売を始め、本格的にスタートしたのは9月である。 ■ 「防災」プラス「防犯」でも低価格セキュリティサービスを実現 東京ガスの「ホームセキュリティサービス」は、ガス漏れには東京ガスが、犯罪には綜合警備保障株式会社(以下「ALSOK」と記載)が出動するという方式で、ALSOKとの協業で提供されている。「基本セット(1,900円)」に、ニーズに応じて「防災」と「防犯」を積み上げていく自由設計型の「ホームセキュリティサービス」で、メニューと料金は次のようになっている。
競合の他社サービスに比較して、低価格でサービスを提供しているのが特徴だ。サービス開発時から、新規参入の場合は「低価格」にするのが得策という読みはあったが、価格設定については、システム機器設備開発費・販促費など全てのコスト試算を行ない、結果的に低価格を実現できたというのが偽りのないところのようだ。 低価格を実現するために留意した点は、認証用にICカードではなく暗証番号方式を採用し、機能をシンプルにしたこと、またコントロールボックスは他社に比べて「ボタン」を少なくしたこと。これは、高齢者の加入も少なくないと見込んだためだ。高齢者でも簡単に利用できるように配慮している。 ALSOKは、東京ガスと「駆けつけサービス」のパートナーとして提携する一方で、独自に「ホームセキュリティ7」という家庭向けのセキュリティサービスを提供し始めた。 東京ガスのサービスは、セコム株式会社が提供するサービスとは価格帯・ターゲット層は異なるが、「ホームセキュリティ7」とは競合する。「ホームセキュリティ7」の方が後発で、多少顧客を奪い合う面も否定できないが、ホームセキュリティ市場の活性化というメリットを感じているという。 このように、東京ガスはALSOKとの協業でサービスを提供しているが、利用者からの料金回収は東京ガスが行っている。利用者の誤操作等によるALSOKへの臨時出動料金が発生した場合は、月額料金にプラスして口座から引き落とされることになる。 サービス概要図
■ 「鍵安心サービス」と「ガス安心サービス」で競合と差別化 東京ガスのサービスで、他社サービスにはないものが二つある。 ひとつは「鍵安心サービス」。遠隔錠(補助錠)をつけ、外出先からインターネット機能付き携帯電話やパソコンで、玄関の鍵の閉め忘れ確認や施錠ができるというサービスで、セコムにもALSOKにもないものだ。 もうひとつは、「ガス安心サービス」。これは「マイツーホー」と同等のサービスだが、外出先でガスの消し忘れに気づいたら、インターネット機能付き携帯電話やパソコンから、遠隔でガスの遮断や確認ができるというもの。 ただ、セキュリティサービスといえば、やはり「防犯」というイメージが強いため、「基本セット」+「防犯」+「防災」という方式でメニューを選んで積み上げたときに、「防災」メニューはカットされることが多い。金額を合計したときに、高いという印象をもたれると、「防災」が"切りしろ"になってくるわけだ。 しかし一方で、ガス安心サービス「マイツーホー」の契約者が、「ホームセキュリティサービス」に切り替えることもあるので、その場合は「防災」を継続するケースが多いという。 ■プロモーションはスモールスタート プロモーションは、広告会社を交えて検討を行ったが、地域限定でサービスを開始したということもあり、地区限定のフリーペーパー広告、駅貼りのポスター、保育園でのチラシ配り、「マイツーホー」の顧客へのDM発送などスモールスタートとなった。 保育園でのチラシ配りは、夫婦共働きで不在がちな家庭は、子どもの安全に関心があると考えたからだが、効果をあげたとは言い難い。 東京ガス管内の1都3県全域でサービス提供を始めた後は、2005年3月にテレビCMを実施している。 現在、サービスの紹介役を担っているのは「エネスタ」の担当者である。水周り・ガス周りの機器修理や販売の際に、「ホームセキュリティサービス」を営業する。例えば、ガス警報機を購入した顧客宅に機器を納入するときに、「ホームセキュリティサービスも始めたんですよ」という形で紹介する。顧客が興味を示してくれれば、さらに詳しい説明に入る、という具合だ。 また、営業は「エネスタ」の担当者が家庭に対して行なうだけで、ディベロッパーへの営業は行なっていない。現段階では、「ホームセキュリティサービス」は、既築の一戸建てや集合住宅に向けたサービスという位置付けである。 確かに、ディベロッパー営業での契約は、一度に数百戸の契約が獲得できるが、現在の東京ガスの販路から考えると既築から攻めていくほうが契約を獲得できると踏んでいる。新築については、今後の展開の中で、次の段階で攻めていこうというスタンスだ。 だが、エネルギー供給事業者として、「オール電化」との競争は避けられない。オール電化に対抗するために、営業的には、「ホームセキュリティサービス」は東京ガスを使っている顧客だけにしか提供しないという戦術をとっている。 6月1日現在、サービスの契約数は700件強。横浜市青葉区の利用が多くなっているが、横山氏によると「地域性なのか、エネスタの営業力か、判断は難しい。おそらく新興住宅地で住宅の密集地だから、防犯・防災の意識が高いのではないか」ということだ。 集合住宅と一戸建て住宅の利用比率は、1対3あるいは1対4で、集合住宅より一戸建ての利用が多い。また現在のサービス利用者は、結果的に高齢層が若干多くなっているが、共働きの若夫婦や専業主婦のいる家庭もサービスを利用しており、利用者は多種多様である。 当初から「自由設計」サービスをうたい文句にしたこともあり、「基本セット」(1,900円)のみの利用からフルメニュー利用の1万円クラスまでと、利用形態はさまざまである。平均的な4,000〜5,000円台の利用が多いが、このところ「基本セット+人感センサー2個」(2,900円)の契約も増えているという。 ■ ALSOKとのパートナーシップは良好。課題は知名度を上げること まだサービス開始から間がなく、加入者数も多くないため、大きな問題は発生していない。特に、東京ガスに良いイメージをもっている顧客から利用が開始されていることもあり、利用者には東京ガスの"シンパ"が多いので、反響はよいということだ。 警備会社系のセキュリティサービスの問題点として、「誤報」がよく取りざたされるが、これまでガス漏れ「誤報」による「誤出動」は1件も発生していないという。 ただ、人感センサーの「誤作動」による「誤出動」はゼロではない。「防犯(侵入・火災・非常)」はALSOKに委託しているが、人感センサーは、ペットが通ったり、暖められたカーテンがふわっと舞い上がるだけでも敏感に反応するので、少しの温度差で誤出動が出る。 したがって、家の中でペットを放し飼いしている家庭には人感センサーをとりつけられないそうだ。ちなみに、ALSOK側も、センサーの反応を心得ていて、誤出動の度に駆けつけ料金を請求するということはないという。サービス提供に関して、「防災」は東京ガス、「防犯」はALSOKと棲み分けができており、パートナーシップも良好だ。 当初は、3年間で3万件獲得を目指したが、まだ目標には達していない。「低価格」を打ち出すと、より多くの顧客数を獲得しなければならないというジレンマが付きまとうのは常である。しかし、既に「マイツーホー」で50万件契約の実績があり、同じペースでの顧客獲得は難しいとしても、数年後には必ず黒字転換できると見込んでいる。「ストックビジネスですから、今後の市場拡大には確信があります」と横山氏。 顧客数の獲得を目指して、手始めに、2005年の春にテレビCMをオンエア。東京ガスが「ホームセキュリティサービス」を提供していることを認知してもらい、「東京ガスのホームセキュリティ」の知名度アップを狙ったものだ。 そのCMにより知名度が上がり、「エネスタ」は、非常に営業がしやすくなったという。また、テレビCMの後は、低価格帯プランの加入が増え、「セコムと違って安い、どうしてこんなに安くできるのか」という反応もあるという。テレビCMは功を奏したようだ。 ■ 当面はオール・ターゲットで契約数増を、将来的には「トータルホームセキュリティサービス」を目指す まずは、目標に向けて契約数を増やしていくというのが課題となっている。 今後は、当面、オール・ターゲットで契約数を増やす方針だ。「エネスタ」が営業することから特定の年齢層をターゲットにするのが難しいため、幅広く声をかけ、興味のある人に売っていくほうが適切と考えている。ユーザー・ターゲットが絞られた段階で、ターゲットに向けたマス広告を打つことを考えているという。 また販路を拡大するために、「エネスタ」以外にも、量販店に契約の受付窓口を設置することを検討している。実際に見積・施工をするのは東京ガスの教育を受けた「エネスタ」のホームセキュリティ担当者が各家庭に出向いて行うため、量販店の窓口は、単に見積依頼を受け付けるだけであるが、効果は大きいと思われる。 さらに、将来的には「トータルホームセキュリティサービス」の提供を企図している。現在「リモートプラス」という名称で提供しているホームオートメーションサービスと「ホームセキュリティサービス」を統合させたい考えだ。「リモートプラス」は、携帯電話でお風呂や床暖房を遠隔操作できるというもので、新築住宅だけに向けて営業している。そこで、既築住宅に向けて営業している「ホームセキュリティサービス」と統合すれば、全家庭をカバーできるからだ。 「価格帯から考えて、セコムが競合とは考えていません。セキュリティサービスを利用したいが、セコムは高くて利用できないという層は多いと思います。そうした層をターゲットにして告知や営業をし、片や『安心サービス』、そして片や『ガス便利サービス』というように『トータルホームセキュリティサービス』を提供していきます。」と横山氏は意欲満々だ。 家庭向けセキュリティサービスの更なる市場拡大を期待したい。 |
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