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イプシ・マーケティング研究所
<コラム&レポート> -ビジネスレポート-
電子チケットビジネス

 ぴあ株式会社は、世界に先駆けて2003年に「電子チケット+電子クーポン」の複合サービスをスタートさせた。また、交通チケットとしては、JRのSuicaが普及し、さらに航空券のチケットレス化の動きも進んでいる。ここでは交通の分野も含めた電子チケットのサービス内容やビジネスを紹介する。

第1回 ぴあ株式会社
2004.9.17
<ぴあ株式会社> http://pia.jp/pia/


■ 「チケットぴあ」から、「電子チケットぴあ」へ


福川勢司氏
福川 勢司氏
 ぴあ株式会社(以降"ぴあ"と記載)は、代表取締役会長兼社長の矢内 廣氏がまだ大学生であった1972年に、月刊情報誌「ぴあ」を創刊したことに始まる。1984年に日本初のコンピュータオンラインネットワークによるチケット販売システム「チケットぴあ」をスタート。これにより、情報誌「ぴあ」で興行情報を探し「チケットぴあ」で前売りチケットを購入するというスタイルを社会に浸透させた。

 昨年10月、「チケットぴあ」のサービス名称を「電子チケットぴあ」と変更し、電子チケットサービスを世界に先駆けてスタートさせた。ぴあにとってこれは"第三の創業"となる大きなプロジェクトである。

 今回は、ぴあの電子チケットビジネス戦略について、電子チケットマーケティング事業部モバイルメディア推進部部長の福川勢司氏に、東京、半蔵門にある本社でお話をうかがった。  


■ 電子チケットとは


 電子チケットとは、従来の紙のチケットをデジタル化しただけではない。

 ぴあの電子チケットサービスを利用するには、「@ぴあ会員」へ登録(無料)する。会員には、ひとりひとりにインターネット上に「デジポケ」(=デジタル・セキュリティ・ポケット)が無料で提供される。

 デジポケとは、ネット上の電子私書箱のようなものだ。Webサイト「@電子チケットぴあ」か携帯サイト「電子チケットぴあi」でチケットを購入し、配送方法にデジポケを選択すれば、自分のデジポケに電子チケットが格納される。ユーザーは、デジポケに格納された電子チケットを、コンビニ(ファミリーマート)やチケットぴあの店舗に行って紙チケットとして受け取るか、携帯電話やICカードにダウンロードしてそのままチケットとして利用する。

 つまり、パソコンや携帯電話から、インターネットでチケットの検索・購入・決済をし、会場に設置された専用ゲート「デジゲート」に電子チケットをダウンロードした携帯電話やICカードをかざして入場と、一貫してデジタル情報のやりとりのみでチケット販売サービスを完結するしくみが作られたのである。


「電子チケット+電子クーポン」サービス全体像
ぴあの「電子チケット+電子クーポン」サービス全体像



■ 2つの革命


 福川氏は、ぴあの電子チケットサービスには、今までのチケット事業を変える2つの革命的要素があると言う。

 ひとつは、チケットを配送する必要がなくなったことだ。

 従来のインターネット販売は、購入後、紙チケットを「郵送」することにより受け渡しが行われていた。チケットは、他商品と比べてEC(Electronic Commerce=電子商取引)に適していると言われながら、決済後の商品流通は物販商品と同様、リアル配送となっていた。そのためインターネット上の販売は、配送期間を考慮して、興行日の約10日前で終了せざるを得なかった。

 ぴあでは、インターネットでの売り上げを年々伸ばしており、2003年にはチケット販売額トータルの2割を占めるに至った。これをさらに拡大するには、ネット販売のチケット配送期間のための販売期間の前倒しがネックになっていた。しかし電子チケット化することにより、チケットを配送する必要がなくなり、ネット上での販売を当日まで行うことが可能になったのだ。ユーザーにとっては、当日までチケットが購入可能になったうえ、今まで負担していた郵送手数料が不要になるというメリットもあった。

 もうひとつの要素は、ネット上で会員間のチケット分配を可能にしたことだ。

 チケットの購入は、幹事役の人が同行者の分もまとめて購入し、後で同行者にチケットを渡すというのが大半だ。そこでぴあでは、電子チケットでも個人間の受け渡しを可能にする必要があった。従来アナログの世界でできていたことを、デジタルに置き換えたらできなくなってしまうのであれば意味がないと考えたからだ。

 購入者が複数枚のチケットを購入した場合、購入者のデジポケに、購入者自身の電子チケットと、同行者の電子チケット複数枚を格納する。同行者が「@ぴあ会員」ではない場合、新規で会員登録する必要があるが、決済登録のいらない「@ぴあフェローズ」という会員区分もあるため、登録における抵抗感も軽減できる。そして、同行者が会員登録を完了させ、固有のデジポケにチケットを分配することができるのだ。

 たとえば、イベント当日に急に行けなくなって遠方の友人にチケットを譲る場合も、チケットの分配が容易なため、譲渡相手を探しやすくなるのではないか、とぴあではみている。

 またぴあにとっては、自分から能動的にチケットを購入しない人でも、友人に誘われてデジポケを作るために会員に登録する、つまり会員が同行者を新会員登録に誘導し、会員拡大につながるという効果もある。


■ 電子チケットの会場ゲートシステム 「デジゲート」の戦略


 ぴあが狙う電子チケットサービスの完成形は、電子化したチケットデータを紙チケットに引き換えるのではなく、そのまま電子チケットとして入場してもらうことだ。

電子チケットの会場ゲートシステム「デジゲート」
電子チケットの会場ゲートシステム
「デジゲート」

 現在は、デジポケに入った電子チケットを、NTTドコモの赤外線通信機能が標準搭載された携帯電話(504i以降)と、ICカード(現在はNTTコミュニケーションズが発行する「電子チケット機能付きセーフティパス」のICカードに対応)にダウンロードすることができる。そして前述したように電子チケットをダウンロードした携帯電話やICカードを、会場に設置されたデジゲートにかざせば、デジゲートがチケット情報を認証し入場できる。

 会場ゲートシステムのデジゲートは、「タッチパネル」と、チケットデータを認証する「読み取りリーダーライター」と、「ジャーナルプリンタ」の3点からなる。プリンタは、入場時に席番号などを紙に印刷するためのものだ。ダウンロードする媒体がICカードの場合、ユーザーは電子チケットの内容を見ることができないので、その確認用である。

 デジゲートは2004年7月末時点で、延べ143会場に設置された。そのうち常設は38会場で、残りは興行ごとに貸し出しをしている。

 今後デジゲートの設置数を増やしていく方針ではあるが、全ての会場に設置することは考えていない。

携帯電話を「デジゲート」の「タッチパネル」にかざす
  携帯電話を「デジゲート」の「タッチパネル」にかざす
 日本国内でイベントが開催できる会場(公民館や、映画館など)は、約4,000ヶ所あるといわれるが、そのうちの約5%の200会場で、ぴあが取り扱っているチケットの7割から8割分をカバーできる。そのため、この200会場にデジゲートを設置することを最終的な目標としている。

 デジゲートの設置は、iモードFelica対応機種などの広がりや、各種キャリアの動向を見つつ進めていく予定だ。たとえデジゲートで入場できなくても、電子チケットを紙チケットに発券できる場所が「チケットぴあ」の窓口とコンビニも合わせると約6,500店舗あるので、ユーザーに不便を感じさせることはない。当面は主要な会場に設置することで、電子チケット自体の認知度を高めることをめざしている。

 JR東日本の「Suica」が普及したため、機械にかざして入場する行為自体には利用者も慣れてきており、デジゲートの利用にも抵抗はないだろう。そして実際に利用してみれば電子チケットの利便性を理解してもらえるはず、とぴあでは確信している。

 では、38ヶ所の常設されたデジゲートの利用状況はどのようになっているのだろうか?

 はっきりしたデータは取られていないが、スポーツイベントなど、リピーターが多いところは、利用頻度が高い傾向が出てきている。電子チケットサービスのユーザーへの告知は現在は特に行っていないが、各イベントの告知や口コミで広がっているようだ。


■ 会員の実態

 2003年10月のサービススタートからまだ1年経過していないが、「@ぴあ会員」は80万人(2004年8月末時点)を突破した。
 
 そのうち「郵送」利用者は2割、「デジポケ」利用者は8割に達する。チケットの電子化はユーザーに受け入れられ、浸透しつつあるといえよう。予想を超える早さで浸透しているのは、チケットを分配できる機能など利便性が評価されてのことではないかと、ぴあでは推測している。

 ぴあは、クレジットカード機能がついた「PIAカード」を発行しており、その保有者は26万人(2003年3月末時点)いる。その半数以上がネット会員に登録しているデジポケ利用者だ。

 携帯電話からの会員登録者も、会員全体の15%程度と高い割合を占めている。これは、iモード先行などのキャンペーン効果によるものである。

 「@ぴあ会員」の属性としては20代半ばから30代が多く、男女比は若干女性が多い。ぴあでは年内にデジポケ利用会員が100万人を突破すると見ている。


電子クーポンぴあ


 ぴあは、電子チケットサービスと同時に「電子クーポンぴあ」サービスも開始した。「電子クーポンぴあ」とは、パソコンのサイトからクーポンを紙にダウンロードしたり、携帯電話の画面を見せることで、レストランや映画館、買い物などの割引が受けられるものだ。

 ぴあでは、このサービスを「イベント行動連鎖型クーポン」サービスと位置づけており、現在、東京・名古屋・大阪で展開されている。

 電子チケットの発券と同時に、イベント・会場周辺エリアに関連した電子クーポン情報が配信される。個々の電子チケットに付帯して配信されるので、電子チケットが同行者に分配されても、全員に電子クーポン情報がセットで届く仕組みとなっている。

 このクーポンサービスを、電子チケットサービスと同時に開始したのには理由がある。

 ぴあは、これまでの紙チケットを電子化するだけではサービスは発展しないと考えた。利用者は慣れ親しんだ紙チケットの方が利用しやすいからだ。電子チケットを広めるためには、紙チケットにはない付加価値が必要であった。

 そこでぴあは、電子チケット利用者に何かしらのインセティブを付加させることはできないかと考えた。それがこの電子クーポンサービスなのだ。電子チケット購入者に、そのイベント会場近くのレストランなどのお店情報を配信することにより、ユーザーにとっても広告主にとっても使いやすいクーポンサービスとなる。

 ただ、広告媒体として考えると難しい点もある。イベントごとにユーザー像が明確に想定できるので、ターゲットを絞りこみたい広告主には効果的だが、一方でひとつのイベントごとのユーザー数には限りがあるので、広告媒体としてのリーチが限定され過ぎて広範に渡り訴求させたいという要望には応えられない状況がある。

 そのため、電子クーポンは、電子チケットに連動しているものだけではなく、「@ぴあ会員」登録時に入力された基本属性をもとに、会員がよく行くエリアに該当する電子クーポン情報を「日常行動連鎖型クーポン」として電子メールで配信するサービスも行っている。


ぴあのモバイルサイト

「電子クーポンぴあi」

「電子チケットぴあi」

電子クーポンぴあi 電子チケットぴあi
(c)PIA corporation (c)PIA corporation


■ 携帯サイト「電子チケットぴあi」

 
 電子チケットぴあの携帯サイトは、各キャリアによって、対応状況が異なっている。

 iモード公式サイトは、99年2月、iモードのサービススタートと同時に「iモードチケットぴあ」という名称でサービスを開始した。2000年6月にはiモードでチケット購入が可能になり、2003年10月の電子チケットサービススタートと同時に、サイト名称を「電子チケットぴあi」に変更し、新たなサービスを開始した。

 一方auでは、チケット情報の検索サービスのみ展開し、ボーダフォンでは、チケット情報を検索し、購入までが可能であるなど、キャリアによりサービス展開が異なっている。

 こうしたキャリアごとの違いをなくし、サービスを利用できるユーザーの拡大を図るためにも、今年度中には全キャリアのサイト上でデジポケを利用した電子チケットサービスに対応すべく準備を進めている。


■ 今後の課題

 
 さまざまなイベントや公演の中にはチケットが売れないで残っているケースや、売り切れているとユーザーに思い込まれて残っているケースも多く、残券マーケットの取り込みはシェアの拡大のためにも大きな課題である。

 その対策の一つとして、2004年2月にYahoo! JAPANを運営するヤフー株式会社と、インターネット上での各種チケットの販売業務提携をした。アクセス数の多いYahoo!にチケット情報を掲載し、販売窓口を広げることで、ネットでのチケット販売率の向上を狙っている。

 もうひとつの課題は、当日券市場のシェアを拡大していくことだ。

 興行チケット市場は、年間1兆3千億円程度あると言われているが、その大半が当日券窓口で販売されているものだ。あらかじめチケットを予約、購入する前売券市場は、当日券市場と比較すると非常に小さいのが現状である。

 電子チケットサービスを拡大していくことで、この当日券市場のシェアを伸ばしていくことができるのではないか。たとえば、東京ディズニーランドに行くときに、当日窓口に並んで購入するのではなく、出かける前や移動中に入場券を電子チケットとして購入することにより、窓口に並んだりする手間無しに入場できるようになる。さらに、お得なクーポンももらえるという付加価値を付けることで、ユーザーの拡大を図れるのではないかとぴあでは期待している。

 デジポケ保有者数は順調に伸びているが、ぴあでは、利用可能な携帯キャリアの拡大を始め、今後も使い勝手の改善やサービスの向上に取り組んでいく考えである。 

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