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| 第4回 ポケットカード株式会社 |
| 2003.8.15 |
| <ポケットカード株式会社> http://www.pocketcard.co.jp/ ■ 生活密着型ICカードを目指して―ポケットカード株式会社の挑戦―
今や私達の生活にしっかりと入り込んだクレジットカード。そのクレジットカードが、これまで主流だった磁気カードから、ICチップを搭載したICカードに変わり始めている。クレジットカードがICカード化することによって、どんな事ができるようになるのか。 今回は、ICカード化したクレジットカードで興味深いサービスを試みておられる、ポケットカード株式会社(以下、ポケットカード社)の経営企画部IR担当の廣田泰久氏に、東京都港区の本社でお話を伺った。 ■ 流通系クレジットカード会社、ポケットカード社のあゆみ ひとくちに「クレジットカード」と言っても、発行機関(会社)別に大きく銀行系、流通系、信販系、メーカー系などに分類できる。 図1:系列別クレジットカード発行枚数(実数)
ポケットカード社が発行するカードは、流通系のクレジットカードに分類される。2003年2月現在でのカード会員数は345万人で、流通系では第4位。クレジットカード業界で初めてICカードの年会費を無料化するなど、業界の先駆けとなってきた。 現在のポケットカード社の前身は、1982年に設立された株式会社ニチイ・クレジット・サービスである。 (株)ニチイ・クレジット・サービスは、1986年、総合小売業の株式会社マイカルの運営するSATYやVIVREの店舗内で使用できる自社クレジットカードの発行を始めた。そして、マイカルが店舗を拡大するとともに発行枚数を伸ばし、1994年に社名をマイカルカード株式会社に変更。その後、流通系カード業界で着実な成長を遂げ、業界第4位を占めるに至った。 流通系カードの会員は全般的に女性比率が高いが、ポケットカードでは、流通系他社と比べても突出して女性の比率が高い(図2:有効会員男女別構成比)。これは、SATYやVIVREといったファッションを主力とする女性向け業態のためだ。 しかし2001年9月、主力営業基盤である株式会社マイカルが経営破綻する。既に三洋信販株式会社に親会社は異動しており資本面での影響は無かったが、営業面では影響を受けることになり、これに対応する形で、同年12月にはポケットカード株式会社と社名を変更。大阪にあった本社を東京都港区三田に移転した。"新生ポケットカード"として新たなる歴史を歩みはじめたのである。 図2:有効会員 男女別構成比/会員数の推移
■ 業界初の試み 初年度年会費無料でのICカードの発行 ICカード化のあゆみは、1999年2月のICカードの運用実験とともに始まった。同年8月から「MYCAL IC CARD」の本格発行を開始。従来のクレジットカードにICチップを搭載することにより、情報量の大容量化(メモリー容量は16KB)、セキュリティの向上などの実現を狙ったものである。 ICの動作環境には、MULTOS(マルトス)という、モンデックスインターナショナル社等が開発した全世界共通仕様のOSを採用。MULTOSの採用による効果については、ポケットカード社では以下の事項を挙げている。
図3:ICチップ内部
ICカードの発行費用は、現在でも1枚500円から1,000円程度かかる。磁気カードが100円程度なのと比べると、その当時はかなりのコスト高であった。それでもポケットカード社がICカード導入に踏み切ったのは、データのセキュリティ確保が大きな理由として挙げられる。 クレジット業界の抱える問題で筆頭に挙げられるのが、クレジットカードの不正使用である。多発しているのは"スキミング"という方法。加盟店の端末に細工をし、磁気カードから読み込まれたデータを盗み、そのデータで別の磁気カードを発行して他人になりすますというものだ。 ポケットカード社は、横行する磁気カードの悪用を回避するために、磁気カードよりも安全なICカードに切り替えたのだ。 また当時、ポケットカード社が提携しているMasterCard Internationalは、2002年度中に全てのカードにICチップを導入するという方針を掲げており、同社のプリンシパルメンバーであるポケットカード社はICカード発行に踏み切ったわけである。 また、2001年12月、ICカードのセキュリティ向上に取り組むとともに、利用されていないカードの整理、さらにICカードに必要なメンテナンス・コストを大幅削減を実現したことにより、ICカードとしては業界で初めて初年度の年会費無料での発行を始めた。 しかし、ICインフラ環境が普及しないことや魅力的なコンテンツの不足などの理由により、2002年10月からは、一部カードを除きポケットカード社の発行するカード゙は磁気カードに限っている。ICカード化しての発行は中断しているが、ICカード化されたポケットカード社のカードは現在も200万枚程度が流通している。 ■ ICカードに魅力的コンテンツを付加する数々の試み クレジットカードのICカード化の目的は本来、加盟店での決済にICチップのクレジット機能を利用してもらうことだった。そのためには、クレジットカード会社側でICカードを発行すると共に、加盟店側にICカードリーダライタを設置してもらう必要がある。しかし現状では、全ての加盟店にリーダライタを設置してもらうのは難しい。 そこで、リーダライタがない加盟店では従来どおり磁気カードでクレジット機能を利用できるように、各クレジットカード会社は磁気カードとICカードが相乗りしたカードを発行している。 そのICチップの空いた容量でクレジット機能以外の付加価値をつける試みが行われている。現在ポケットカード社が発行している、ユニークな付加価値のついたICカードの一部を紹介しよう。 ○HABカード:ペットのカルテを電子カルテ化してICカードへ記録
HABカードは、動物病院にICカードリーダを設置し、ペットの受診データをICチップに記録すると、カードが電子カルテにもなり、またJAHA加盟動物病院で治療代金の支払いにクレジットカードとして利用することもできる。 ○アイアイカード:診察券機能付きICカード
ポケットカード社は、診察券と、診察後に眼科医が処方した視力データをICチップに入れ込めないかと考えた。2003年2月、大阪でABCコンタクトを経営している有限会社テキストと独占契約を結び、診察券機能つきのICクレジットカード「アイアイカード」を発行し始めた。 使い捨てコンタクトレンズを購入する人は、これまで少なくとも3ケ月に1度は診察費を負担していた。しかし「アイアイカード」ならICチップに10履歴まで格納できるので、眼科医で推奨されている定期検診期間内であれば、診察を受けずにコンタクトを購入できるようになる。 しかもカード会員は、診察受付から治療費の清算、視力データの管理、レンズやケア用品の購入まで「アイアイカード」1枚で済ますことができる。さらに、このカードで治療費その他を支払うと、1,000円で5点ずつ独自のポイントがもらえ、たまったポイントは、治療費の支払いに使用したり、レンズが購入可能なクーポン券に交換できる。 しかし、眼科診療を受ける会員が診察やレンズ購入にカードを利用するのは、数ケ月か半年に1回程度である。毎日使われるクレジットカードとしては広がりが難しいこともあり、発行枚数が伸び悩んでいる。一方で、業界関係者からの関心は高く、問い合わせも多い。 ○ホープタウンカード:地域密着型ICバリュー付きカード
ホープタウンカードの機能の中でおもしろいのは、"ICバリュー"と呼ばれるものだ。ICバリューとは、期限付きの一定金額をカードのICに登録し、その金額の範囲内なら暗証番号だけで米子ホープタウン内での買い物ができるというシステムである。小銭を準備する手間も不要で、"キャッシュレス"の便利さを狙っている。 使い方は、まず店内にある専用端末にホープタウンカードを入れ、暗証番号を押し、バリュー金額をカードにロード(情報登録)する。1回50,000円まで、毎月1回のロードが可能で、1度ロードした残高は翌月末まで有効だがその後は消失する。 買い物時に、レジでICカード決済する旨を伝えると、ロードしたバリュー残高内で1円から買い物ができる。また、現金やクレジットとの併用も可能だ。バリューの残高は清算時のレシートに表示される。請求はロードした時に発生するのではなく、使った分だけ翌々月に銀行口座から引き落とされる。ICバリューで100円以上買物すれば、請求時に1%割引の特典もつく。 現在この「ホープタウンカード」は約3万枚流通している。2003年4月1日現在、米子市の人口は140,162人。米子市住民の約5人に1人が「ホープタウンカード」を持っている計算になる。 「ホープタウンカード」がここまで浸透したのはなぜか。毎日利用するスーパーマーケットで、プリペイドで買い物ができる"ICバリューサービス"がカードの人気を高めたためと考えられる。ICバリューに対する利用者の反応を、廣田氏は以下のように話す。 まず、利用者がレジ精算が素早く済むことに、カードの便利さを実感していること。利用者は、夕食などの買い物の忙しい時間帯に、レジでの清算をさっと済ませたい。ICバリューの決済はオフラインで行うため、通信時間が短く、高速にレジ処理が出来るのが好評だった。また、ICバリュー分はクレジットカードの限度額とは別枠となり、与信額の幅が広がった事も利用者に喜ばれた。1円からの小額決済が可能なので、食品などの購入にはクレジットカードよりICバリューの方が利用しやすいこともある。 一方、利用加盟店側にとっては、オフラインであることで手数料率が低く抑えらていたので導入しやすかった点が挙げられる。 ■ インフラ未整備とニーズ不足が失敗の要因 上記のようなカード発行を続けながらも、現在はメインカード「ポケットカード」のICカード化を休止している。その第一の理由は、インフラの未整備だ。2002年時点で、クレジットカード業界ではまだICカードの発行が普及していなかった。MasterCard Internationalでも計画どおりにはICカード化が進まなかった。インフラも整っておらず、ICカードリーダが加盟店に設置されていないため、せっかく高いコストをかけICカードを発行しても磁気カードとしてしか利用されていない状況だった。 第二の理由はニーズ不足だ。クレジットカード会社が発行する限り、ICカードを発行するだけで終わりなのではなく、ICカードについているクレジット機能をカード会員に使ってもらい、クレジットとしての収益を出さなくてはならない。それにはクレジットカードと相性の良い、ICチップにのせるコンテンツが必要だろう。現在は、それを各社模索している状況なのだ。 さらに、ICカードの高いセキュリティによって恩恵を受けるのは、実は利用者よりもカード会社の方である。 磁気カードでは、カード会員がカードを他人に悪用された場合に会員本人が被害額を負担する義務はない、という保証が整っている。それがICカードでは、カードと、ICカード決済時に必要な暗証番号を盗まれて悪用された場合、暗証番号が合っていれば本人が支払った公正な取り引きと認識され、カード会員が被害額を負担しなければならない、ということになる。 そういう意味で、クレジットカードをICカード化することは、カード会員(つまり消費者)にとって必ずしも安全とは言えない。磁気カードに入れていたデータをICカード化して悪用を防ぎ、損失を最小限に抑えたいのは、むしろクレジットカード会社の方なのだ。ICカードの一番の特性であるセキュリティに関して利用者側のニーズに合致していないのが、ICカードが広まらない大きな要因の1つではないだろうか。 ■ 今後は魅力あるコンテンツで再挑戦 ICカードの普及には、起爆剤となるような魅力的なコンテンツとインフラの整備が不可欠である。事実、JR東日本のSuicaは、毎日使う定期券・回数券というコンテンツと、JR東日本のほとんどの駅で使えるというインフラがあって、600万枚発行という大成功を収めたのだ。 クレジット業界でもICカード化の動きが止まっているわけでは決してない。 この2003年5月に国土交通省が、ETC(ノンストップ自動料金収受システム)(※1)の推進を図るため、一般車に限りETC車載器購入時に1台あたり5,000円を、10万台に達するまで助成するという動きがある。 この施策によってETC車載器の購入者が増え、それに伴いETC用のICカードが今後増加していくのではないか、とETC対応のICカードを発行するポケットカード社でも期待をかける。 また、ポケットカード社はワーナーマイカルシネマズと業務提携を行っており、ワーナーマイカルシネマズ店舗でのカード利用者募集を実施したり、カード会員への特典をワーナーマイカルシネマズから提供を受けている。ワーナーマイカルシネマズは、全国43カ所に複合型映画館を展開し、年間2500万人を超える観客動員数を誇る映画興行業界最大手だ。 昨年9月からチケット窓口で入場券のクレジットカード決済ができるようになった。今後はインターネットで予約もできるようになる予定で、将来的にはネットでの決済、さらにはICカード化してチケットの電子化を図ることを視野に入れ、検討を進めている。 導入時にはICカードの持つセキュリティの高さばかり注目されていたが、今後はICチップにカード情報を入れた後、そのチップの空いた容量に載せるコンテンツをいかに魅力的にし、"持ちたいカード"となり得るかが普及の鍵だと考えられる。ユーザに色々な場所で使ってもらうためにも、セキュリティは接触型で確保しつつ、コンテンツは非接触でピッと手軽に使えるというコンビカードが今後は主流になるのではないだろうか。 生活密着型のカードを目指して、カードの形体やコンテンツも含めてどんな魅力が出せるのか、ポケットカード社の模索が続く。 ※1:ETC(=ElectronIC Toll Collection System)とは、車両に設置されたETC車載器にETCカード(ICカード)を挿入し、有料道路の料金所に設置された路側アンテナとの間の無線通信により、車両を停止することなく通行料金を支払うシステムのこと。(国土交通省道路局ITSホームページより) |