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| 第2回 トラボックス株式会社「Tr@Box」 |
| 2002.1.17 |
| Tr@Box http://www.trabox.com ■物流業とドライバーの総合ポータルサイト<Tr@Box>を運営
2001年12月現在の会員企業数は約2300社、総トラック台数は75000台に達している。社長の藤倉泰徳氏に東京・根津のオフィスでお話を伺った。 ■運送業2代目同士の呑み仲間、居酒屋での思いつきから「トラネット」を"発車"
もともと社長の藤倉氏は東京・足立区にある運送会社の2代目経営者。運送業の業界団体である東京都トラック協会の足立支部青年部 ( 現在は藤倉氏が部長を務めている)に所属し、同じ2代目経営者である田代氏 と気が合ってよく一緒に青年部で活動をしていた。また、ときには仲のよい 他の青年部の部員も加えて10人で居酒屋に行くこともあった。 日本の運送業は全国に5万社あるといわれているが、その9割以上は中小零細企業だ。(注:運輸省=現・国土交通省の調査では、平成11年3月末現在で52,119社、そのうち保有トラック50台以下の事業者が93.2%となっている。)こうした、中小零細規模の運送業はあまりIT化が進んでいないため、中小運送業者たちは、空きトラックの情報交換を電話やファクシミリで行っていることが多い。足立支部でも例外ではなく、トラックが足りないときや、逆に空いていて仲間うちで空きトラックを回してもらったり回してやったりする場合、電話やファクシミリを利用するのが常だった。だが電話では、1対1でしか情報交換ができないし、かけた相手が忙しかったりすると、「ちょっと待って、あとで折り返すから」ということになり、タイミングよくトラックを回すために多大な手間がかかっていた。 藤倉氏は、そうした状況をなんとか打開できないものかという思いを抱いていた。そして1999年のある日、居酒屋で田代氏や他の仲間と酒を酌み交わしながら、「なんか仕組みをつくろうよ」ということになり、思いついたのがiモードのメーリングリストを使った「トラネット」というわけだ。 ■「トラネット」が会員2300社の<Tr@Box>に成長するまで したがって、当初は足立区内の運送業者仲間十数社のための仕組みとして始めたもので、ビジネス化は考えていなかった。幸い、田代氏が自分の会社のホームページを作り上げるだけの技能をもっており、この「トラネット」も、田代氏が藤倉氏と相談しながら仕事の合間に半年ほどかけて、仲間が使いやすいように構築したものだった。名称も、トラックのネットだから「トラネット」、と遊び心でつけた。1999年11月のことだ。 たまたま、よく取材に来ていた業界紙の記者が、この「トラネット」を記事にしてくれたことがきっかけで注目されるようになり、新聞を読んだ九州や神戸の運送業者が登録を依頼してきた。そのうちに、1か月で30社、次の月は50社と登録依頼が舞い込むようになり、しだいに会員が増えていく。 そこで、2000年3月、某外資系コンサルタント会社で新規事業起ち上げの仕事をしていた人からのアドバイスもあり、株式会社を設立して本格的にビジネス化に着手する。その時点での会員は200社。その年の末には1300社まで増えた。サイト名をトラックやトラフィック関連の情報箱という意味の<Tr@Box>に変更、社名もトラボックス株式会社とした。冒頭に記したように、現在では会員数が約2300社にも伸びている。 あっという間の株式会社化であったが、ハードルがなかったわけではない。すでに「トラネット」を始めたときに、業界の古株からは批判も受けた。会社概要や運賃情報をサイト上でオープンにすることで、それまで裏側で行われていた運送業特有の値決めが荷主にさらけ出されてしまう、荷主から受けた仕事を横流しして手数料を取っていた場合はその金額がわかってしまう、などと心配されたのだ。 それでも、若手が頑張っているということで、「今では、業界内での理解もだいぶ得られるようになりました。」(藤倉氏)と、若さと粘りでハードルを越えてきた。 しかし、株式化したときはITバブルの絶頂期であったが、周知のとおりその後は景気全体が低迷を続けている。会員数の増加がそのまま増収につながらないので、<Tr@Box>の運営はけっして楽ではない。 ■採算がとれるビジネスモデルとしていくために仲介料を有料化 設立当初から会員制をとっているが、会員登録は無料である。会員登録の際は、自社の情報を提供する。この情報提供のレベルによって、会員をノーマル会員(社名、住所、電話番号、メールアドレスという基本情報のみ公開)とゴールド会員(基本情報に加えて、物流の取引の 際に行う代表者名や資本金など一般的なレベルの情報公開)に分けている。さらに、<Tr@Box>が提供する決済サービス(後述)を利用する場合は、プラチナ会員と呼んでいる。 マッチング・サービスのしくみはシンプルだ。各会員は、空車情報あるいは荷物配送依頼情報をフォームに入力して提供する。蛇足だが、これらの情報提供は無料だ。会員各社は情報一覧を見て、取引したい企業に直接電話して交渉する。取引が成立すれば、あとは直接それぞれで受発注のやりとりから決済まで行うが、プラチナ会員であれば<Tr@Box>が提供する決済サービスを利用することもできる。 他に参加企業が13000社近くある。参加企業とは、<Tr@Box>に会員登録していなくても、荷物の配送依頼をできる荷主企業だ。例えば製造業が加盟する会員数約1万社の<NCネットワーク>(注:NCネットワークについては次回のビジネスレポートで紹介する予定)とはシステムを接続しているので、NCネットワーク加盟各社はそのIDとパスワードで<Tr@Box>に荷物配送依頼ができる。通常、製造業は運送業者と年間契約をしている場合が多いが、急ぎや予定外の配送依頼のときには、<Tr@Box>の会員でなくともマッチング・サービスを利用できるというわけだ。 サービス開始から2年間は仲介料を無料にしていたが、広告料とシステムのレンタル収入だけでは十分な収益を上げることができないと判断。そのために2001年11月1日から仲介料の有料化に踏 み切った。2年間無料で通したものを有料にするのは心苦しい選択だったようだが、ビジネスとして健全に運営していくための合理的判断といえよう。 料金は、情報検索の利用度 に応じて会員が選択できるように、固定制と従量制の2つのタイプを用意している。固定制は、一か月3,000円でいつでも会員専用ページの求荷求車情報の全画面を閲覧できる。従量制の方は、求 車情報リストの閲覧までは無料だが、リストの中でさらに詳細情報を見たい場合、<詳細>をクリックすると一回につき30円が課金されるしくみ。現在のところ固定制と従量制の割合は、ほぼ1: 1となっている。 ■システム構築もコンテンツ企画もすべては現場のニーズ発想 以上のようなしくみやコンテンツは、藤倉氏と田代氏が運送業経営者としての経験とアイデアをもとに考えだしていくのだが、使いやすいサイトにしなければ利用は拡大していかない。特に運送業者はITに慣れていない場合が多く、"軽いサイト、わかりやすい画面構成"がサイト構築の鉄則と、藤倉氏は考えている。 また、サイトで提供するコンテンツの企画についても、「基本は、自分が欲しい情報であること」(藤倉氏)だ。運送業の現場を知り尽くした人ならではの発想から、事業者やドライバーが必要とすると思われるコンテンツを企画していく。 「運送業で仕事探し」「求人求車ネットリンク」「便利ホームページ」など、事業者やドライバーに役立つ情報満載の<便利Box>。さらに、さまざまな製品やサービスの情報を提供し、そこから出品している企業ページに入れる<トラ商店街>など、<Tr@Box>のコンテンツは多彩だ。 会員ページには掲示板も設置している。物流事業者のこうした情報交換の場は地域レベルでは存在するが、これまで全国レベルでは設置されていなかったので、非常に好評で、アクセス数は月間約1万ページビューにものぼる。 そして、システム構築には強力なアドバイザーがいて、ほとんどボランティアに近い形でシステムを築き上げてくれた。<Tr@Box>の求荷求車情報サービスはiモードからも利用可能だが、送受信する情報量に限界があるため、iモードでは検索専用で 利用している場合が多いそうだ。 ■2002年1月スタートの新決済サービスで利用者のメリットが増加 <Tr@Box>では、2001年5月から決済サービスを提供してきた。決済サービスを利用できるのはプラチナ会員のみで、プラチナ会員になるためには決済サービスの提携先である信販会社の審査が必要となる。また、決済サービスを利用すると手数料を支払わなければならないので、少しでも出費を抑えたい中小零細事業者には、プラチナ会員になるのをためらうケースが多いようだ。 前に述べたように、会員登録のための登録料や、サイトへの商品情報の掲載料は無料だ。 そこで、利用者の増加とサービス向上を図るために、これまでのサービスを改善し、2002年1月から新しい決済サービスをスタートさせことにした。新決済サービスは、取引の際に運送業者へは運賃を保証し、荷主業者へは運賃の回収代行及び2000万円までの荷物保険をつけることになる。 さらに、新サービスには次のようなメリットがある。 (1)運送事業者のメリット ・決済手数料が現在の7%から5%に下がる ・運賃回収を代行して口座に自動的に振込みしてもらえるので、請求を含めた事務作業の大幅な軽減になる ・運賃の受け取りは、現在の月末締め翌々月末受け取り(60日)から15日後受け取りになる (2)荷主事業者のメリット ・決済手数料無料はこれまでどおり ・決済サービスを利用することで、成約した荷物(運賃3000円以上)に自動的に荷物保険が付加される ・運賃の支払いは、現在の月末締め36日後支払いから毎月10日締め47日後支払いに延長される ・運賃は自動引落としなので事務作業が軽減される ■マッチング・サービスに加えて、新たなサービス展開を目指す このほかにも、中小零細規模が多い全国の運送事業者が安い料金で気軽に利用できる、新しいサービスを計画中だ。 藤倉氏の目には、運送業のIT化がかなり遅れているように映る。運送業者にもっとインターネットを活用してもらいたいという思いから、2002年2月にIT関連の支援サービス(サービス名は「トラパック」)を開始する。 また、ASP事業にも力を注いでいく。現在、求車求荷システムレンタルの 利用者は、企業単位あるいは地域限定のクローズドなシステムにカスタマイ ズして利用している例がほとんどである。これも、見知らぬ事業者とネット で情報交換をしたり取引することに、まだまだ不安をもつ人が少なくないた めと藤倉氏は考えている。そこで、まずは地域限定で知り合い同士でシステ ムを使ってもらい、その利便性をわかってもらった上で、全国展開の< Tr@Box>のシステムと連動させていきたいという将来展望をもっている。 2001年には、「日経インターネットアワード2001ビジネス部門」を受賞した。「e-マーケットプレイスがどんどん拡大しても、最終的にはサービスやデジタルコンテンツ以外は、必ず物流が伴う。<Tr@Box>の存在意義はますます高まると思っています。」(藤倉氏) 日本のB to B ECの市場形成がやや足踏みする中で、順風満帆とはいかないかもしれないが、今後も物流事業者やドライバーのニーズに応えるサイト構成を目指す、と藤倉氏の意気込みは十分。 <Tr@Box>に、これからも物流の効率性を高める期待がかかる。 |