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イプシ・マーケティング研究所
<コラム&レポート> -ビジネスレポート-
現場発想主義を貫く e-ビジネス
急速な市場拡大を期待されながら、足踏み状態のB to B EC。普及のカギを握るのは、マーケット現場のコアとなる情報をうまくビジネスに結びつけた事業者ではないだろうか。大手企業主導やシステムベンダー主導ではない、現場のニーズ主導で起ち上げた、注目のe-ビジネスを紹介する。
第1回 株式会社ラクーン「オンライン激安問屋」
2001.12.26
オンライン激安問屋  http://www.raccoon.ne.jp

自らの辛い体験をきっかけに在庫処分ビジネスを開始


ラクーン社と小方社長
ラクーン社と小方社長(中央)
 <オンライン激安問屋>は1998年8月に起ち上げられた在庫処分サイト。サイトの運営は、株式会社ラクーン(社長:小方功氏)が行っている。小方氏は、1993年に対中国貿易商社を創業し、その貿易商社を経営するなかで、自ら過剰在庫を抱えてピンチに陥った体験や周囲の小さな会社が倒産していく現実を目の当たりにし、切実なニーズを感じて過剰在庫の転売業務を始めた。1998年春のことだ。

 転売業務の開始後、半年ほどしてオンライン化を決意。<オンライン激安問屋>のホームページを起ち上げた。しかし、サイトを立ち上げただけでは商売にならず、しばらく鳴かず飛ばずであった。まだ、世の中にECが浸透していなかったことも低調の一因だった。その後、さまざまな試行錯誤を重ねながらシステムを改良し、再構築。ようやく、2000 年5月ごろから次第に取引が増え始め、今では不景気風を吹き飛ばすように破竹の勢いで拡大している。2001年12月現在、会員数は、販売メーカー側が約500社、購入小売店側は13,000社あまり、毎月の取引件数は5,000件に達している。

 今回は、社長が多忙なため、取締役・情報戦略部長の渡邊りん氏にお話を伺った。


■商品の小分け化で小売店のニーズ掘り起こし



渡邊りん氏
渡邊りん氏
 サービス内容を紹介しよう。簡単にいえば、その名のとおり、メーカーの過剰在庫を小売店に破格の安値で卸す、オンライン上の問屋だ。過剰在庫は企業経営を左右しかねない場合もあるため、メーカー側は一刻も早く、一円でも高く処分したいわけだが、現在の景気の中で一括して処分するのは容易ではない。

 そこで、<オンライン激安問屋>は商品を「小分け化」して販売するという方法を編み出した。よりよい商品を、より安く仕入れたいというのは、どの小売店にも共通している。<オンライン激安問屋>の購入側会員である小売店は、首都圏に限らず全国各地に点在しており、「小さく・新しく・地方にある」という特徴がある。地方の、小規模小売店の場合は、どんなによい商品でもたくさん売れるわけではないので、大きなロットは必要ない。また、買い付けに上京するのもなかなか容易ではない。オンラインで品質のよい商品を小ロットで安く取引できるなら、仕入れのためにわざわざ上京することもなく、時間と交通費が節約できるというメリットがある。

 オンラインでの「小分け化」販売戦略は、こうした、「地方の、小規模な、ネット取引に抵抗がない新しい世代」の小売店のニーズを掘り起こすポイントとなっているのだ。


■販売メーカーの匿名性を守るため自社内で検品



 一方、販売するメーカー側にとってのメリットは、サイトに掲載するのは商品情報のみで企業名が公表されないということ。販売メーカー会員には、大企業も少なくない。ブランドイメージをそこねたくない大企業にとって、匿名で取引できるのは大きな魅力だ。

 匿名性を守るために、ラクーンでは商品の検品をすべて自社内で行っている。例えば、アパレル商品は、アパレル業界から転職してきたスタッフが、販売メーカー側の受注から、商品の検品、購入小売店側への発送までを一貫して担当する。どの商品についても、それぞれ商品知識の豊富なスタッフが受け持ち、商品の色や形態、品質などをチェックし、妥当な価格を判断していく。このときに、仕入れ量に応じて、ロットを「小分け化」する作業も合わせて行う。

 販売メーカー側は、電話やファクシミリなどで商品情報(見本は送付)と在庫量を提供するだけでよい。また、会員登録が必要だが登録料や掲載料などはかからない。


■販売メーカーとの取引形態は<受発注型>と<消化仕入型>の2方式



 販売メーカーとの取引形態には2つの方式がある。ひとつは、「受発注型」取引と呼んでいるもの。これは、最初に販売メーカーからは、まず商品のスペックや数量などの情報だけ(見本を添付してもらう)を受け、ラクーンが情報をサイトに掲載、購入小売店側からの注文が入ってからラクーンが販売メーカーへ商品を発注する方式だ。販売メーカーからは、在庫量や商品写真、サイズ・素材、価格などがアナログ情報で送られてくるため、ラクーンのスタッフは、ウェブに掲載できるようにデジタル情報に加工し、仕入れ量に応じた「小分け化」をして<オンライン激安問屋>のサイトに掲載する。この場合の「小分け化」は販売メーカーからの情報のみで行うことになる。サイトを見た購入側小売店からの注文が入ると、ラクーンが販売メーカーに発注し、商品をラクーンに送ってもらう。商品は社内で検品・梱包し、小売店に発送するという仕組みをとっている。

取引の流れ1

 もうひとつは「消化仕入型」と呼んでいるもので、商品を予め預る、いわば委託販売方式。販売メーカーから、先に在庫商品をラクーンの倉庫に送ってもらい、検品と小分け後に商品情報をサイトに掲載する。この方式だと、小売店からの注文が入るとすぐに商品を送ることができる。「受発注型」方式では、商品発送までにタイムラグが起こることや、欠品が生じてしまうという問題点が出てきたため、それをクリアするために考え出されたものだ。なお、「消化仕入型」取引で、ラクーンの倉庫に残った商品については、オークションで販売することにしており、売れ残ることはない。

取引の流れ2

 2つの方式ともサイト上に商品を展示して通常に販売するが、どちらの取引形態を選ぶかは、販売側が選択できる。2001年12月現在、「受発注型」と「消化仕入型」を選ぶメーカーはそれぞれ半々ぐらいである。


■オークションコーナーをサイトに設置



 2001年9月から、サイト上にオークション・コーナーを設けた。オークションを利用する場合は、販売メーカー側は「消化仕入型」取引を選ぶことになっており、事前に商品をラクーンに送付しておく。ラクーンでは、商品を小分け化して、オークション・コーナーに掲載する。

 オークションは、1日4回サイトに出品(掲載)する。1回の制限時間は、24時間。オークションを始めた当初は、販売メーカー側が売れ残るのではないかという不安を抱く例もあったが、商品価格が0円からスタートするので、いくらになるかはともかく確実に落札され、売れ残ることはない。だからといって、安すぎて売り手に不満が残るということもなく、妥当な価格で売れるという実績を示すことができたので、次第に利用が増えた。その結果、現在では<オンライン激安問屋>の販売額の3割を占めるまでになっている。


■手数料は完全成功報酬型、初期コストは不要



 このように、「問屋」というイメージを一新するマッチング・サービス、情報加工サービス、そして24時間対応、オークションなどの付加サービスの数々を見ると、「いくらかかるのか」というのが気になってくる。

 前に述べたように、会員登録のための登録料や、サイトへの商品情報の掲載料は無料だ。
 ただし、販売メーカーは、ラクーンに在庫商品を送る場合の送料は負担しなければならない。

 手数料は、完全成功報酬型で、取引が成立した場合にのみ支払う。販売メーカーは、販売額の30〜50%をラクーンに支払うことになっている。たとえば、販売メーカー側がある商品を10,000円で提示したとすると、ラクーンでは3,000円を上乗せしてサイト上で販売する。また、オークションの場合は、10,000円で落札されたとすると、そこから30〜50%の手数料を引いた金額が販売メーカーに支払われることになっている。

 この手数料には、商品を写真撮影しサイトに載せることから、商品の検品や仕分け、小ロットへの組み替え作業、小売店への送料・決済コストがすべて含まれる。マージン比率を聞いて驚くメーカーに対しては、その作業内訳を説明すると納得してもらえるそうだ。なお、購入する小売店側は、料金代引きで支払うことになっている。


■若手スタッフを活用した組織でサービス向上と顧客満足を追求


 ラクーンの事務所は、11月の末に東京・渋谷から人形町に移転したばかり。1、2階が倉庫、3階はオフィスとなっている。それまで全国4か所に拡散していた倉庫をこの事務所に集約した。地方の倉庫に出向いて検品する負担を省き、商品を身近に置いて情報提供するほうが、サービス向上と顧客満足につながるという考えからだ。

 また、ひとつの商品の取引は、その商品に詳しい担当者が販売メーカー側の受注から、商品の検品、小売店への商品発送までを一貫して行うことを原則にしている。受注から発送、もしものときのクレームに対応するところまで、責任をもつ事で、付加価値をつけたサービスの質を保つことができるからだ。さらに、単純作業を繰り返すより、効率は悪くても、一つの商品を一貫して担当するほうが、やりがいが湧くという社長の方針でもある。

 従業員はパート・アルバイトを含めて56人、そのうち正社員は30名。オンライン上の取引全般と倉庫業務を担当するのがスタッフの大半で約40人、システム開発を行う技術者が10人、会員増加のための営業部隊は2人で行っている。パートやアルバイトでも、システム構築を担っていたり、取引を任されている人も多く、若くて元気な従業員が多い。


■会員数増加より継続的に利用してもらえるサイトをめざす



 現在、取り扱う商品は、「小売による未引き取り品」「シリーズ変更による型落ち品」「季節終了による過剰在庫」に限っている。販売メーカーの匿名性を保つという原則を貫き、リスクが高い中古品や倒産品は扱わない。

 また、商品アイテムはアパレル、雑貨、家電などで、取扱商品数の半分をアパレルが占め、雑貨は4割強、家電は1割弱となっている。今後は、家電の取扱をさらに縮小する方針だ。

 というのも、消費者が商品を購入する際に、家電は型番だけで購入することに抵抗が少なく、直接オンラインで購入しやすいB toC EC向きの商品であり、ラクーンでは、こうした商品は「オンライン問屋」の役目が小さくなるのではないかと予測しているからだ。

 一方、アパレルや雑貨の場合は、色や手触りなどが選択のポイントとなるので、消費者は実際にリアルの小売店に出向いて自分の目で確認したいと思っていることが多い。消費者が自分の目で確認しないと買わない商品でも、小売に携わるプロならば、写真や素材・サイズ・デザインなどを示すスペックで商品を選択できる。だから、オンライン小売は成立しにくいが、オンライン卸は成立する。ラクーンでは、これらの商品のほうが、今後も「オンライン問屋」の本領を発揮できるとの考えだ。

 これまで、雑誌などへの殆どださず、営業マンがメーカーに出向いて一から説明し、歩いて顧客を獲得してきた。そして、2000年に「日経インターネットアワード賞2000」を受賞したことは大きな励みになった。

 今後は、一度<オンライン激安問屋>を利用したらリピーターになってもらう、つまり会員数を増やすより、継続して利用してもらえるサイトにしていきたいという展望をもっている。当面の目標は、月商1億円。

 昨今の景気低迷の中で、<オンライン激安問屋>の存在価値はますます高くなる気配だが、M2R(Manufacture to Retailer)の商流確立を目指し、「"ネットビジネス"というよりは"流通業"の基本に忠実な展開をしたい(渡邊氏)」という方針は変わらない。顧客満足を念頭に、スピーディーなサービスをめざそうとがんばっている。その心意気にエールを贈ろう。


※同社は、2002年2月より新商品流通サイトの運営も開始した。
サイト名:スーパーデリバリー
http://www.superdelivery.com

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